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「おーい、未来、未来!」
フガッていう声とともに、頭がパーッとすっきりする。
あれ、私寝ちゃってた?
目の前で眉を吊り上げてるのは、幼馴染で、高校も同じクラスの、伊伝心だ。
あぁ、大丈夫。これは本当に怒ってる顔じゃない。幼馴染だからわかるんだ。
「お前なぁ、暑い中来てやったんだ。わざわざUターンして戻ってきたんだぞ。なに気持ちよさそうに寝てるんだよ! ほら、指示なり説明なりしろって!」
「ら、ラジャー!」
あ、もう集合時間過ぎてるのか! まだちょっと寝ぼけてるけど、そうだね、早速動かなくちゃ!
私はベンチの上に立って――っていうのはお行儀悪いからしないけど、胸を張って、ないヒゲを撫でるような動作をして、それっぽく見せてみた。ね、指揮官っぽく見えるでしょ?
「……して、集まってくれたのは何人かな?」
「見たらわかるだろ」
それっぽい言い方もしたのに、ツッコミはなかった。ノッてもくれなかった。きっと今すぐにでも動き出したいんだね。そう思って、公園を見渡す。
――おかしいな。代わりに私がツッコまなきゃいけないみたい。
「心以外見当たらないよ」
「そうだよ、俺一人」
そんなバカな。
んー確かに、いくら見渡しても、心以外人っ子一人見つからない。
何か動いたと思っても、猫がうろちょろしてたり、鳥が飛んでたりするだけ。そんな。
「え、学級委員は? わかったって返信してくれてたよ」
「あぁ、あいつは今、先生をなだめてるはず。後で来るんじゃねえの」
先生をなだめてる、か。そういえば教室を出るとき、先生、学級委員の机に突っ伏して泣いてたかも。「私の華々しい初担任がぁ」って言って。
珍しいことじゃないから、いくら私たちドライじゃないと言っても慣れちゃった。
「他は? 他には来てないの?」
「いないって。返信したのは俺とあいつだけだっただろ」
「そうだけど」
そう、返信をくれた2人っていうのは、学級委員と心。そうなんだけど。
「他にもいるはずなの」
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