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詰み詰み回避願望。
僅か10歳で 何故か兄の友人だった皇子の婚約者に内定した、との通達を受けた日から、俺の人生は詰んでしまった。
大人になったら結婚しようね!と約束していた伯爵家の櫻子ちゃんにも知られてしまい、お幸せにね、と言われて絶望したのも全部クソ皇子がゴリ押しで婚約を進めたせい。
いやマジで、なんで?
なんで俺?俺の何が琴線に触れました?
自分で言うのも何だけど、俺、マジで頗る普通。
黒髪黒目薄顔標準体型。
主張し過ぎないとこが良かったのかな、と好意的に捉えようとしても、あの服装センスが主張し過ぎてるからプラマイゼロ…いやゼロにはなんねーな。
悪い方に振り切ってたわ、今考えたら。
同性婚は普通とはいえ、皇家とかお世継ぎが必要なとこはせめて皇太子妃候補は女性にしたら?
いやもうマジで意味わからん。
大体、俺、異性愛者で、全く皇子に興味が無い。
正式に婚約者に決まってからも、破棄されてから学園内で死ぬ迄も、男に興味すら持った事すら無い。
婚約している間だって、将来皇子とセックスしなきゃならん事を考えて、キッツ…ってずっと暗澹としてた。
因みに唇はとうに日常的に奪われ中である。
皇子殿下は俺より5歳も上なんだぞ。
犯罪に近いんじゃね…?
つか、セックスて。
…いやいくらイケメン相手ったって、キツいものはキツい。
だって突っ込まれるの、俺だろ…?
突っ込むのも…アレだけどさ…。
だから破棄自体は良かったんだけど、破棄のされ方って…あるじゃん?
何も大勢の人間が来てるとこで恥をかかせる必要ってあった?
皇家にはそういう気遣いとか、無いのか。人を人とも思わねぇのか殿上人は?ああん?
内々といかなくても、せめて普通に解消してくれさえしたら、あの後の虐めだって彼処まで陰湿にはならなかった筈だ。
俺んちだって、それなりの高位貴族な訳だし、無闇に舐められたりはしなかった筈。
しかしだ。あれでは。
殿下が無碍に扱ったから、もう後ろ盾もないし多少無茶したって…って勘違いした連中が出てきても仕方ない。
特に、学園は寮生活になるし、ある意味 治外法権とも言える空間になる。
何かあってもその最中だと中々発覚はし辛い。
何か起こったとわかるのは大体事件後だ。
そしてその頃には、証拠も証人もわからなくなって有耶無耶になってしまう事も多い。
特に下位貴族なら、その扱いはそれはもう顕著なものだ。
俺だって死ぬ前の嫌がらせの数々は、学園側や教師達に訴えても、調査はしてくれはしたが、ろくに何もわからなかった。
死んだ後は…どうなったかはわからないけど、過去に戻って色々アクションを起こした事によって、きっと死ぬ未来は無くなる筈…いや、何としても回避してみせる。
皇宮からの帰路、車窓に流れる景色を眺めながら俺は決意を新たにした。
この先のアイツ(皇子)との接触を、出来る限り断つ。
そして俺は例え服のセンスが超絶微妙でも、櫻子ちゃんと結婚する。
もし櫻子ちゃんがもう無理でも、とにかく可愛い御令嬢と付き合うし結婚する。
俺の人生、自力で軌道修正してみせる。
そしてとにかく今夜は欠席だ!!
しかし俺は忘れていた。
皇子との間に何かあれば(皇子がチクると)、何処からなりともすかさず飛んでくる我が兄の存在を。
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