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「ちょっと理央っち~!今それどころじゃないでしょ!」
すぐ近くを走っていたアヤカが呆れた声を出した。その傍らで、柊が目を輝かせている。
「もしかして……恋の予感!?」
「ひ、柊ちゃんも、今は逃げるのに集中しなよ……」
深也が控えめに窘めた。
そんなことを言い合いながら、しばらく走っていたその時。
「っ……止まれ!」
香偲の声で全員が立ち止まった。
「……何かに見られてるわね」
花琳の言葉に、全員が辺りを見渡した。
「ね、ねぇ、ちょっと寒くない?」
柊がそう言うと、アヤカは頷いて顔を青くした。
「ま、ま、まさか……幽霊とか出てきちゃったりする……?」
アヤカがそう言ったその時。
「フフフフ……」
黒い布を身に纏った、青白い顔の人間が姿を現した。
足は……透けていて見えない。
「きゃーーー!!お化けーーー!!」
お化けが大の苦手であるアヤカが悲鳴を上げた。
「ア、アヤカ、落ち着け!」
理央がアヤカをなだめる。しかし、黒い幽霊達はあっという間に聖夜達を取り囲んでしまった。
「フフフフ……!」
幽霊達は手から青白い炎を繰り出す。
「みんな、オレの影に隠れろ!」
香偲はそう言って全員を集め、ドーム状のバリアを展開した。炎が、バリアに遮られる。
「フフフフ……!」
しかし、幽霊達の攻撃は止まない。香偲のバリアも徐々に押されつつあった。
「くっ……一体どうしたら……」
香偲達が途方に暮れた、その時。
『異世界の戦士達を導き給え』
どこからともなく少女の声が聞こえ、香偲達の体が白い光に飲み込まれた。
……香偲達の姿が、森から消えた。
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