6人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
一方、他の面々は屋台を巡り歩いていた。
「あ、金魚すくいあるじゃん!俺行ってくるわ!」
理央が走り出そうとするのを、順が止める。
「林、待て。元の世界に連れて帰るつもりか?無理だろ」
「そんなことねぇし!ちゃんと連れ帰って、世話するからさ!」
それだけ言うと、屋台に駆けていく理央。
「ま、マイペース、だね?」
深也が苦笑いしながら順に声を掛けた。
「ほんとにな……海透、様子を見てきてくれないか」
「うん……僕で良ければ」
深也は促されるままに、理央の元へ向かった。
「あ~っ!取れねぇ……」
そこには、破れたポイと睨めっこする理央と、ニヤリと笑う屋台の男性がいた。
「お兄ちゃん、下手だな」
「う、うるせぇ!」
「……理央君」
深也が声を掛けると、理央はびくりと体をすくめた。
「うわっ!深也、居たのか……」
「もしよければ、僕にやらせてくれない?」
「い、いいけど……これ、難しいぞ?」
戸惑いながらポイを渡す理央。深也はそれを受け取り、金魚の動きに集中した。
「……それっ!」
勢いよく金魚を掬い上げ、入れ物に移す。ポイは……破れていない。
「お~、お兄ちゃん、なかなかやるねぇ」
深也の取った金魚を袋に入れながら、男性は豪快に笑った。
「こ、こういうの得意なんです……」
深也は金魚を受け取ると、理央に手渡した。
「はい。あげるよ」
「え、いいのか?」
「うん。僕、寮で一人暮らしだし、世話するの大変だから……」
「マジか!……ありがと。大事にする!」
「……うん」
理央の明るい笑顔につられ、深也も自然と笑顔になった。
最初のコメントを投稿しよう!