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「オラシオンに通貨はないよ。なにせ、現世で生を全うした生き物たちが毎日のようにこっちに来るからね。それに、オラシオンで食われた生き物たちは、今度は現世に運ばれる。資源が循環してるから、金はとってないんだ」
「へぇ~……じゃあタダで貰えるってこと?」
「その通り!はい、おまち!」
店員はたこ焼きを詰めたケースを珠喇に手渡した。
「ありがとうございます」
「美味しく食べて、そのタコを現世に送ってやってくれよ!」
珠喇達は店の前からはけて、道の隅でケースを開けた。
「美味そうだな。ほら白雪、初たこ焼きだよ」
珠喇が爪楊枝にたこ焼きを刺して、白雪に手渡す。
「あ、ありがとう。いただきます」
白雪はたこ焼きを口に頬張り……その熱さに火傷しそうになりながらも、よく噛んで味わいながら、それを飲み込んだ。
「……美味しい」
「な、オレの言った通りだろ。白雪がたこ焼きを食えて、ほんと良かったわ」
香偲がニッと笑う。その横で、白雪も満足そうに微笑んだ。
「うん!……翔太、元の世界に戻ったら、また僕をたこ焼き屋さんに連れて行ってくれる?」
「……はいはい。分かりましたよ。俺でよければ連れて行きます」
目を輝かせる白雪に、翔太はやれやれと微笑んだ。
「ふふ……冷めないうちに、俺達も食べよ」
珠喇の声に頷いて、3人もたこ焼きを口に運んだ。
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