6人が本棚に入れています
本棚に追加
さも当然のように答えるサイラスを見て、ルーナは涙を零した。
「もう、私の知ってるサイラスじゃないのね……」
「……ルーナ、諦めちゃダメだよ」
俯くルーナに歩み寄り、その手を柊が握る。
「大事な人の手を、簡単に離しちゃダメ。その人が変わってしまったなら、道を踏み外してしまったなら、正しい道に引き戻してあげるの」
「……私にできるのかしら」
不安げなルーナに、柊は力強く微笑んだ。
「できるよ。だって、女王様を頑張ってきたルーナだもん!」
シエも歩み寄り、ルーナのもう片方の手に触れた。
「その通りです。ルーナさんならできます」
「2人とも……ありがとう」
ルーナは2人の手を離し、意を決してサイラスに向かって歩いていった。
「サイラス」
ルーナはサイラスに向かい合い
「バカッ!!!」
その頬を、思い切り叩いた。バチンと大きな音が響く。
「私は……オラシオンが好き。そこに暮らす人々が好き。その好きな場所を守るために、いつだって手を貸してくれた優しいサイラスと、ここで過ごした全ての時間が、本当に好き。なのに……」
ルーナの声が震える。
「なのに、なんでそれを全て否定するようなことをするの!?どうして禁術に手を出したの!?やめてよ……やめてよサイラス!!」
サイラスが、ハッとした表情になる。
「これ以上、私の大事なものを傷つけないで……」
「ルーナ……僕は、ルーナを傷つけていたのか……?」
最初のコメントを投稿しよう!