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「オレが……このオレが、負けるなんて……」
倒れて起き上がれないドウェインの元に、シエが歩み寄った。
「当然です。あなたには、守るべきものが無いから」
「守るべきもの……?」
「はい。家族、友達、仲間……大事な存在を見失って、自分のことしか考えていないあなたに、私達が負けるはずがありません」
シエの毅然とした態度に、ドウェインは力無く笑った。
「はは……そうかよ」
「あなたには無いのですか?守るべきものが」
するとドウェインは遠い目をして口を開いた。
「昔はあったさ。唯一無二の親友がな。だが、オレは裏切られて……命を落とした。この絶望が分かるか?」
「……分かります」
シエはゆっくり頷き、ドウェインを真っ直ぐに見つめた。
「私達も……生徒会の仲間も、それぞれ何かを抱えている。絶望、苦しさ、悲しさ……でも、それを抱えたまま、強くなろうとしている。変わろうとしてるんです」
シエは優しく微笑んだ。
「あなたも、変われます。だからどうか、前に進んでください」
シエの言葉に、ドウェインは笑顔を見せた。何百年も、何千年もの間忘れていた、穏やかな笑顔。
「……ありがとな」
ドウェインの体が光り輝く。そして、キラキラとした光塵を残して、ふわりと消えた。
「彼……生まれ変わったのですね」
ルーナがシエの傍らに立って、空を見上げた。
「あなたの優しさが、ドウェインを変えたのですよ。ありがとう」
ルーナの言葉に、シエは優しく笑った。
「ありがとうございます。ルーナさん」
「さて……みなさんを元の世界に帰す時が来ましたね」
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