5 悪霊ドウェイン

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「オレが……このオレが、負けるなんて……」 倒れて起き上がれないドウェインの元に、シエが歩み寄った。 「当然です。あなたには、守るべきものが無いから」 「守るべきもの……?」 「はい。家族、友達、仲間……大事な存在を見失って、自分のことしか考えていないあなたに、私達が負けるはずがありません」 シエの毅然とした態度に、ドウェインは力無く笑った。 「はは……そうかよ」 「あなたには無いのですか?守るべきものが」 するとドウェインは遠い目をして口を開いた。 「昔はあったさ。唯一無二の親友がな。だが、オレは裏切られて……命を落とした。この絶望が分かるか?」 「……分かります」 シエはゆっくり頷き、ドウェインを真っ直ぐに見つめた。 「私達も……生徒会の仲間も、それぞれ何かを抱えている。絶望、苦しさ、悲しさ……でも、それを抱えたまま、強くなろうとしている。変わろうとしてるんです」 シエは優しく微笑んだ。 「あなたも、変われます。だからどうか、前に進んでください」 シエの言葉に、ドウェインは笑顔を見せた。何百年も、何千年もの間忘れていた、穏やかな笑顔。 「……ありがとな」 ドウェインの体が光り輝く。そして、キラキラとした光塵を残して、ふわりと消えた。 「彼……生まれ変わったのですね」 ルーナがシエの傍らに立って、空を見上げた。 「あなたの優しさが、ドウェインを変えたのですよ。ありがとう」 ルーナの言葉に、シエは優しく笑った。 「ありがとうございます。ルーナさん」 「さて……みなさんを元の世界に帰す時が来ましたね」
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