不幸は突然に

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 PASMOを落とした。一万円をチャージしたばかりだった。しかも、落としてから、数日経って気づいた。記憶を探る。最後に使ったのは…3日前…?チャージした分は、本人でなくても、会計時にカードを機械にかざせば、電子マネーとして使える。つまり、私は、一万円を落としたのと同じ損失を受けたのだ。そう、悟った真夜中、私は絶望した。 (絶対、誰かに使われてるよぉ…!泣)  しかし、奇跡が起こった。駅に紛失届と再発行願いを出してから、さらにもう数日経った頃、なんと、警察から、PASMOの落とし物が届いているという電話がかかってきたのだ。まぎれもなく、一万円チャージをした、私のPASMOだった。色々やって、確かめてみると、チャージした分のお金は、1円も使われていなかった。驚きである。私のPASMO、復活…!  落とし物が、きちんと戻ってくる日本。銃を持って警備しなくても、ちゃんと住民たちが自粛生活を送る日本。等間隔を守って並び、かつ、列に割り込まない人々の住む、日本…。もし、私が拾い主なら、まず、残高ゼロになるまで、チャージされている分のお金を使っただろう。その後は、足がつかないよう、PASMO自体を割るなどして、すぐ捨てるはずだ。どなたか存じ上げませんが、善なる心で私のPASMOを拾ってくださった御方、どうもありがとうございました。しかし、難儀なことが1つある。私のPASMOが、自宅からゆうに2時間はかかる、遠い町の、遠い警察署に、保管されているということだ。私が落とした可能性があるのは、自宅付近だ。なんで、そんな遠いところまで旅したの、私のPASMO…?  実は、再発行してもらえたので、いま、警察で保管されているものは、ただの銀色のカードになってしまっている。何の役にも立たない。立つとしたら、駅に返却することで、デジポット代が500円戻ってくることと、リサイクルできることくらいだ。とてつもなく辺鄙な場所にある警察署らしく、アクセスが、「最寄駅から徒歩30分」とホームページに載っている。交通費と時間を考えたら、とても、取りに行きたくない。はっきり言って、嫌だ。でも、拾ってくれた人も、電話をくれた警察官も、親切で私を助けてくれようとしたのだろう。そう考えたら、取りに行かなくてはいけない気がしてくる。あと、SDGsもあるし。破棄よりは、やっぱりリサイクル…だよね。  そんなこんなで、忙しく予定を立てていたら、持病が悪化し、仕事を長期で休むことになった。いわゆる、ドクターストップである。すっかり元気になったつもりでいたので、青天の霹靂だった。なぜ、私はこう、周りに迷惑をかけなければ、生きていけないのか。そして、なぜ、いつも、いきなりドーンと来るのか。PASMOは、すぐには取りに行けなそうだ。全くもって、申し訳ないことだ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!