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 分かっているのに脚は動かず、伸ばした手は届かなくて、声は出ない。  スタスタと燈也は、振り返ることなく歩いていく。それから数歩以上歩いたところで「あぁ、そうだ。お前に言いたいことがあったんだわ」もう一度、脚を止めた。  言いたいこと? 嫌な予感しかなくて、身構える。  燈也が身体ごと振り返る。  向かい合ったぼくらの間に流れるのは、ただただ重たい不穏な空気だった。本当もう笑っちゃうくらい。昔のような穏やかなそれが、ぼくらの間で流れることはもう二度と、決してないのだろうと悟る。当たり前だ。だってぼくが全部壊したんだから。  悪いのは全部、ぼくだから。  なにを言われても、間違っても、傷付かないように、ぎゅっと拳を握り締める。  覚悟を決めて、言葉の衝撃から心を護るように、硬く、固く、閉じる。 「二度とオレの前に現れんな。裏切り者」
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