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入れ替わりました
今回は短編です。
文中に出てくる言葉の補足 フード→フードデザイン(調理実習)のこと
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※文中に出てくる言葉の補足 フード→フードデザイン(調理実習)のこと
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ちゅ、ちゅっ。
「ん……」
甘い声と音が響く。
私、広田凛は今、自分の部屋で彼氏とキスをしていた。
ずっと幼馴染だったけど、半年前から付き合い始めた彼氏の今泉瑞貴が、私を抱き締めて
唇を触れ合わせるだけの軽いキスを繰り返している。
もう何度もしている瑞貴とのキスの時は、普段の友達みたいな雰囲気が消えて、甘くて、どこか官能的なとろりとした空気が流れて、いつもの世界とは別の世界に来てしまったみたいな心細さと、いけないことをしているような後ろめたさを感じる。
何度しても、この空気には慣れなくて恥ずかしくて照れる。
ちゅっ。
最後に一つキスを落として、瑞貴は私から離れた。
「可愛い。大好きだよ凛ちゃん」
にこっと笑う、瑞貴。
まるで天使みたいで私はぼーっと瑞貴の顔に見惚れた。
私と瑞貴は小さい頃から仲が良かった。家も近所でずっと同じ学校に通ってた。
ずっと友達で親友で、家族みたいだと思ってたんだけど、高校に上がる頃から私は瑞貴のことを男の子として意識し始めていた。
でも、家族としか思われてないんだろうな、って半分諦めていた半年前の高2の春、瑞貴から告白された。
ずっと私のことが好きだったって。
友達とかじゃなく、彼氏と彼女になりたい、って言われて、私は飛び上がるほど嬉しかった。
そして私たちは付き合うことになった。
瑞貴はほっそりしていて、女の子みたいな綺麗な顔をしている。髪の毛もツヤツヤでサラサラしていて、色も白いし、女装したら間違いなく似合う。私よりも可愛くなりそうだ。
性格も穏やかで、声を荒げるところも聞いたことがないし、私にもものすごく優しくしてくれる。気遣いもすごい。
ズボラな私がしょっちゅうハンカチを忘れて、ぶんぶん手を振って自然乾燥させていると、すぐにさっとハンカチを差し出してくれるし、
学校帰りに一緒にラーメンを食べに行って、ティッシュを忘れた私が鼻水を垂れ流していると、これまたすぐにティッシュを差し出してくれる。
毎晩、寝る前に明日の課題をやったか聞いてくれるおかげで、高校に入ってから宿題を忘れずに済んでいる。
おかげで、瑞貴はうちの母から絶大な信頼を勝ち取っている。
小さい頃からの付き合いだから、元々うちの家族は瑞貴のこともとても可愛がっていたけど、付き合うようになってからはさらに評価がうなぎ上りなのだ。
品行方正な瑞貴のおかげで、
「みーくんなら、凛のこと安心して任せられるわ~」
と、ニコニコ顔の母には、こうしてしょっちゅう私の部屋で二人きりになっても何の詮索もされない。堂々と放置してもらえる。
そして瑞貴も、ちゃんとそこは弁えていて、こうして二人きりになっても飢えた野獣のように襲って来たりなんかせず、軽いキス止まりで清いお付き合いが出来ているのだ。
というか、瑞貴が他の男子みたいにちょっと下品な話をしていたことなんてないし、みんながそういう話で盛り上がっている時も興味なさそうにしてるし、きっとそういう欲が薄いんだろうなと思っている。
私もこの先へ進むのはちょっと怖いから、瑞貴が淡白なのはとても助かるし、ほっとしている。
「私も瑞貴のこと好きだよ」
そう言って笑いあった。
♢♢♢
瑞貴が家に帰ったあと、私はベッドに寝っ転がって、日課になっているスマホゲームの続きをしていた。
課題?あとあと。寝る前にやればいいんだから。
夢中になっていると、玄関がガチャッと開いて「ただいまー」と声が聞こえた。
ピアノ教室に行っていた1つ年下の妹の杏が帰って来たみたいだ。
とんとん、と階段を上がって来ると、私の部屋のドアをがちゃりと開け、部屋の匂いをすんすん嗅いだ後言う。
「りんちゃん、今日もみーくん来てたの?」
「そうだよ」
「やっぱりねー。みーくんの匂いがするもん」
「みーくんの匂い、て何よ」
「うーん。みーくんちで使ってる柔軟剤かな?うちと全然違うじゃん。すぐ分かるよ」
杏は嗅覚が鋭い。嗅ぎなれない匂いがするとすぐに気付くし、敏感だ。犬だ。
「ふーん」
まあなんでもいいや、と思ってゲームの続きをしていると、杏が言う。
「みーくん、しょっちゅう来るけど、部屋に二人っきりで大丈夫なの?」
「ああん?キス止まりだから大丈夫だよ」
「それ以上のこと迫られないの?」
「杏は心配性だなー。あの瑞貴だよ?淡白が服着て歩いてるようなもんなんだから、あるわけないでしょ。完全に安全だよ」
そう言ってやると、杏は呆れながら
「みーくんだって年頃の男だよ。油断してるとやばいと思うけどなぁ。まあ好き同士だから良いっちゃ良いんだけど」
と言い置いて部屋を出て行った。
全く杏は、マセちゃって。瑞貴は私のこと大事にしてくれてるし、私は瑞貴のこと信じてるもんね。
それから夕ご飯を食べたり、お風呂に入ったりして一息付いていると、ピロン、とスマホの通知音が鳴った。
瑞貴からのメッセージだ。
『明日の課題、もうやった?』
「まだ」と返信する。泣いてるスタンプも。
『明日はフードあるからエプロン忘れないようにね』
完全に忘れてた。やっぱり瑞貴は優しい。ちょっとオカンみあるけど。
ありがとうってハート出してるキャラのスタンプを送る。
そしたら、『どういたしまして』のスタンプと、
『大好き』って言ってるキャラのスタンプ。
毎回この大好きスタンプ送って来るんだよね。可愛いから私も気に入ってる。
お返しに同じスタンプを押した。
『私も!』ってメッセージも付け加えると、既読が付いてそこで終わったから、アプリを閉じて明日の準備をすることにした。
ほんと、こんな優しくて大好きな瑞貴と付き合えてるなんて、私は幸せものだ。
♢♢♢
あのあと寝ながらベッドでスマホを弄っていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。ふと気が付くとカーテンの向こうが薄明るくなっている。
まだ5時くらいかな?
時間を確認しようと思って、枕元のスマホに手を伸ばしたけど、どこにもない。
落としたのかもと思って、ベッドの縁にずりずりと移動して床を探ったけどなかった。
じゃあ、壁の時計を見るかと目を開けたら、ぎょっとした。
……ここ、どこ。
よく見ると、部屋に置いてあるテーブルや椅子も全部うちのじゃないし、部屋自体がそもそも私の部屋とはまったく違う。
というか、この部屋って、ひょっとして瑞貴の部屋じゃない?
何度も遊びに来たことのある部屋だ。間違いない。でもなんで?まさか寝ている間に勝手に瑞貴の部屋に忍び込んだ、なんてあるわけないし。
そもそも部屋の主の瑞貴はどこよ?
見回しても、部屋には他に誰もいない。
とにかく、起き上がろうと思って体を起こして、ものすごく違和感を感じた。
体が自分のものじゃないみたいに、重くて動かしにくい。
顔を触ってみても、何だか変な感じだ。
髪も、サラサラだけど、短い。私の髪は肩くらいまであったのに、耳の下辺りまでしかない。
心臓がドキドキし始め、私は急いで鏡を探した。体がどうにかなってしまったのかもしれない。見るのが怖いけど、ちゃんと確認したい。
鏡はすぐ見つかった。クローゼットの扉に鏡が付いていた。
恐る恐る、だけど素早くその前に立って、私は驚きのあまり叫びそうになってしまった。
「瑞貴!?」
鏡に映っていたのは、まさにこの部屋の主の瑞貴だった。
思わず鏡に手を伸ばすと、鏡の中の瑞貴も私に手を伸ばす。どういうわけか、私が瑞貴になっている!?
その時、部屋の中でブーッとスマホのバイブが鳴る音がした。
スマホを探すと、机の上にあった。ホームボタンに親指を当てて指紋認証すると、メッセージアプリからメッセージが届いたという通知だった。
送り主は、私……?
どういうこと?と急いで通知をタップすると、
昨日、大好きスタンプを送りあって終わったやり取りのあとに、
『凛ちゃん、俺、瑞貴。今凛ちゃんになってる。凛ちゃんも俺になってるでしょ?』
というメッセージが今の時間で入っていた。
全身がぞわっとした。
ありえない。とんでもないことになってる。なんでこんなことに!?
色んな言葉が頭に浮かんでくるけど、でも、急いでメッセージに返信した。
『瑞貴!どういうこと?』
『私たち』
『ホントに』
『入れ替わってるの?』
送るたびに即、既読がついて、すぐに返信が来る。
『なんでか分からないけど』
『ほんとに入れ替わってるみたい』
『とにかくあとで』
『学校で話そう』
分かった、と返信すると、既読がついて終わった。
何が何だか分からないけど、とにかく親に気付かれたら病院に連れて行かれたりして、ものすごく面倒臭いことになる気がする。ひとまずいつも通りに登校しなきゃ。
それまで、瑞貴のお母さんたちには入れ替わってることがバレないよう、なるべく普段通りに振舞わないと。
こんなこと、私だってまだ信じられないし、どう説明すればいいかも分からないもん。
大丈夫、小さい頃からずっと瑞貴のこと見てきたし、よく知ってる。できるはず。
私は少し落ち着いた。もう眠れそうにないので、とにかく着替えようとして、ふと気付く。
尿意に。
どうしよう。早速ピンチだ。
うろたえるが、生理現象をガマンすることは出来ない。ごめんね、瑞貴。
心の中で謝りながら、そっと部屋を出て2階のトイレに入る。
そして目を細めてなるべく見ないようにしながら、ズボンとパンツを下げたんだけど。
小さい頃に見たっきりの瑞貴のそこが、尋常じゃないことになっていた。
なんぞこれ。
びっくりし過ぎて、思わずカッと目を開いてしまった。
おそらく、通常じゃない状態になっていると思われるそこは、じんじんとしていて、硬くなって上を向いていた。
何てことだろう。いつの間にか大人になっちゃって……
思わずごくりと喉を鳴らしたけど、はっと我に返ってさっさと最初の目的を果たそうと思ったのだが、なんと。
おしっこしたいのに、出ないのだ。
ぬぬぬ……うぬぬ!
踏ん張ってもまるで出口に栓をされたみたいに出ない。
ええーーーどうしよう!なんでこんなことに!?
泣きそうになった私は、ひとまずパンツとズボンを引き上げると部屋に戻り、メッセージアプリを開いた。
そして瑞貴にメッセージを送る。
『あの』
『おしっこが出ないんですが』
『出したいのに出ない』
『どうしよう~~~』
泣きスタンプ。
すぐに既読が付く。
そして通話のアイコンとバイブの音。
「み、瑞貴~」
私はすぐに泣きついた。っていうか、瑞貴の声で瑞貴って言ってるの、ものすごく変。
向こうからは「凛ちゃん、あのね。ちょっと聞いてくれる?」
って私の声で瑞貴が喋った。
「うん……」
ぐすん、と泣きそうになりながら頷くと、私の声の瑞貴がとんでもないことを言い出した。
「それ、男の朝の生理現象だから、一回イって精液出さないと、おしっこ出せないんだ。だから凛ちゃん、手で俺のおちんちん扱いて、射精してくれないかな?」
「……は?」
今、なんて言った?
「だから、オナニーして射精して精液出して一回萎えさせないと、勃起したまんまじゃおしっこ出にくいんだよ。ね、嫌だろうけど頑張って。おしっこ出せないと困るよね?」
いつもの、優しい喋り方。声が私でも、喋り方でずいぶん違うなあ、なんて別のことを考えながら、私の脳は今瑞貴が言ったことを理解するのを拒否していた。
「ね、凛ちゃん。やり方分からないだろうから、俺がどうすればいいか教えるよ。今部屋でしょ?とりあえず、ベッドに座ってズボンとパンツ脱いでくれる?」
私の脳がショートしている間に、瑞貴がどんどん具体的にリードしてくる。
私は魂を半分口から出しながら、ぎくしゃくと言うとおりにした。
瑞貴の大人になったものが、相変わらず元気に上を向いたまま、再び外気に晒される。
先端がひや、っとしたので見ると、先っぽの穴のところから水のようなのが漏れ出ていて、ちょっと濡れていて、それが外気に当たって冷たさを感じたみたいだ。
「脱いだ?」
と聞かれたので「う、うん」と答える。
「じゃ、右手でおちんちん握って、上下に擦ってみてくれる?」
もう、さっきから普段の瑞貴が絶対言わないような言葉が次から次へと出てくる。おまけにそれを言っているのは私の声、という、とんでもないカオスに頭が飽和しそうだった。
しかし、やらなければおしっこが出来ない。
さっきからもう、尿意がじわじわと迫っていてたまらなくなってきているし。
ええい、もう!やるしかない!
私は瑞貴に言われたように、右手でそそり立っている自分の股間のものを握った。
そのままこすこすと上下に擦ってみる、と……ぴくっと腰が動いてしまうほどの、気持ち良さがせりあがって来た。
「あっ、ふ、ぅっ」
自分でやっておきながら、こんな感覚は初めてで、私は思わず声をあげてしまっていた。
もちろん、通話中の瑞貴にも聞こえている。
「……凛ちゃん、気持ちいいでしょ」
私の声でそう言った瑞貴からは、どこかねっとりした熱みたいなものを感じた。
「あっ、う、うん」
ああ恥ずかしい、でもこの体は瑞貴のだし、ホントに恥ずかしいのは瑞貴の方だよね、でも、これものすごく気持ちいい、あっ、ここすごくいい……
私は混乱して、頭の中で色んなことがぐるぐるしていた。
気が付けば、握っているそれ、の先からダラダラとおしっこなのか何なのか、液体がとぷとぷと溢れて来ていて、一生懸命おちんちんを扱いている私の手に絡んで、にちゃねちゃ、と音を立てていた。
「は、はああっ、なんか、上がって来るっ瑞貴ぃっ!」
声を上げる私に、どこか息の荒くなった、瑞貴が言った。
「もう出そうだね。そこにティッシュあるよね?それでおちんちんの先を押さえて出すんだよ。そしたら汚れなくて済むから」
「はあっはあ、はあ」
私はクラクラする頭で目を走らせ、ティッシュをボシュボシュと何枚も抜き取った。
そしてそれで、今にも爆発しそうなものの先端を包むようにする。
「あっ、あぁーー!!」
一気に何かたまらないものがせり上がってきて、腰が浮く。
気持ち良すぎてぎゅうっとおちんちんを握る手に力が入る。ぴくっぴくっと根元が痙攣したようになって、ものすごい快感と一緒に何かがどっと出て行った。
「っはあっはあはあはあっ……」
「ちゃんとイケたみたいだね。偉いよ、りんちゃん……気持ち良かった?」
笑みを含んだ声がスマホの向こうからしたけど、はあはあ、の合間にうん、と言うのがやっとだった。
そのあと少しくったりとしたものから、無事におしっこは出たけど、私は精神的に疲れて、全身の力が抜けたままだった。
入れ替わっていきなり人の体でオナニーとか、難易度が高過ぎる。カオスだ。学校に行く前に既にめちゃくちゃ疲れた。ちらっと時計を見たら、もう6時だったが、7時半に家を出れば間に合うはず。私は疲れた体をベッドに横たえた。
ちょっと、ちょっと横になって休むだけ……。
…………
「瑞貴、何してるの!?もう7時20分よ!?」
「ファッ!?」
突然、瑞貴のお母さんの大きな声がドアの外で聞こえて、私はガバっと起き上がった。
時間がワープした。
さっき6時だったのに、もう1時間半近くも経っていた。
「今!今起きるから!」
慌てて制服に着替えて、ダッシュで階段を降り、顔を洗って何も食べずに学校へ走った。
ギリギリで間に合った。
しかしギリギリだったおかげで、瑞貴のお母さんと話す暇がなくて良かったかもしれない。
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