挨拶

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挨拶

神戸での大学時代はアルバイトに明け暮れてました。従業員がけっこういるレストランで働いていた時のこと。 アルバイトは女の子が若干多く、僕は年齢でいうと真ん中ぐらい。かわいい女の子は結構いました。僕は、女の子に積極的に話しかけられるタイプじゃなかったけど、かわいい女の子に囲まれて働く状況は気に入っていました。 そして、たまに開かれる、アルバイトの後の仲間が集まっての飲み会。学生なので、十時開始とか十一時開始とか、全然OKで、ここでも積極的に話すわけではないですが、かわいい女の子に囲まれて楽しく飲んでいました。 そんな飲み会の中での出来事。 今日も夜遅くから飲み会が始まりました。話題は最近一人で海外旅行に行った年下のフリーターのアルバイトの女の子の話。海外旅行の行き先で、日本人の旅行者の男と知り合ったらしく、意気投合したそうな。そして、その男の人は東京の人だったそうで、その人に会いに東京に行くとのこと。 おしゃべり好きな年配の女の子が彼女に問いかけます。 「その男の人と、つきあってるん?」 「いや、つきあってへん。」 「そうなのに東京に行くの?」 「そうや。」 「大丈夫なん?」 「大丈夫や。」 なんだか、不穏な雰囲気を感じたのか、年配の女の子は、もう一度問いかけました。 「本当に大丈夫なん?」 「大丈夫や。」 年配の女の子はさらにつっこんだ質問をしました。 「もしかして、もう、キスとか、それより先のこと、あったんか?」 フリーターの女の子は大丈夫かと心配されていることがうっとうしいらしく、 「そうや。」 と答えました。音もなくざわつく一同。さらに、心配されるのが心底うっとうしいのか、フリーターの女の子はさらに言い放ちました。 「そんなん、挨拶みたいなもんや。」 言い負けずに核心を突く年配の女の子。 「遊ばれとるんちゃうん?」 「違うわ。」 「いや、遊ばれとると思うで。」 「違うわ。絶対。」 フリーターの女の子は終電があるのでと、帰りました。終電が関係ない人たちで残って引き続き飲んでいたのですが、まだ、話題はフリーターの女の子の話題。 「絶対、遊ばれてると思うわ。」 「まだ若いから分からへんねん。」 フリーターの女の子が帰ってからも、ずっと彼女のことを真剣に心配して、いろいろああでもない、こうでもない、と話す皆。 その皆の中で、聞くところによると。僕は、そのような状況下、一人、黙々と飲んで、べろべろになって、そして、記憶にないが、侍は、何度も、手酌でついだ日本酒を一気にぐいっと飲んで、そのお猪口をターンと机に叩きつけて、 「俺には挨拶なしかよ!」 と言って荒れていたらしい。記憶にないけど。
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