3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
私は、行かなきゃならない
深夜一時四十五分。
ひっそりと静まり返った神社に向かい、私は階段を登る。急な段差でヒールがぐきっとなって足首をくじきそうになる。でも、私は足を止めない。
私は、行かなきゃならない。
この日のためにできるだけのおしゃれをしてきた。あの日、見せることができなかったグリーンのチェック柄のワンピース。いつもだったら絶対履かないような12cmのピンヒール。髪だって無造作にくくったりしないで綺麗にカールさせてふんわりと顔を覆うようにセットしてきた。
本当なら、このグリーンのひざ丈のワンピースは、そろそろ夏が近づいてくるこんな日に着るには厚手だったけれど、絶対これだけは外せなかった。
「美鈴には緑色が似合うな」と言ってくれた直哉のために、新調したものだったから。
この階段の上に、直哉は来る。
最初のコメントを投稿しよう!