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「植物を育てることを今日から教える」  パパは言った。 「育てる? 生えてくるものじゃないの?」 「この山の中では生えてくるものだが、人間はそれらを育てることもできるんだよ。果実の中には種があるだろう? あれを土に蒔いて、適度に水をやったり肥しをやったりして育てるんだ」  考えたことのないことだった。  森では、草は生え、木の実や果実がなり、それを私たちはとってきて食べていた。  パパは、図のたくさん入った厚い本をまず読むように私に言った。  開くとそれは、確かに植物の育て方を伝えるものだった。  私は夢中で読み、分からないことはパパに尋ねた。  今は雪で土は見えないけれど、春が来て雪が消えたら森から採ってきた種を植えてみようと思うようになった。とても面白そうだ。 「植物が育つには、太陽の光と水と空気は最低でも必要だ。でもそれだけじゃない」  横になったままパパが言う。  先日の鹿の肉を焼いて食べて、食器を洗って片付けて。  いつもはのんびりパパと話しながら寝る準備をする頃だが、パパは本を読みなさいと言う。  そして私が読んでいるページを少し体を起こして一瞥すると、一言ふたことなにか言うのだった。  
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