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「実際にやってみよう」
パパは言った。私はびっくりしてパパを見た。
「こんな雪の中でも、植物を育てられるかしら」
パパは後ろの納屋のなかから、ある箱を持ってくるように私に命じる。
隅の棚の上に置いてあった木の箱を私は台の上で背伸びして、腕を伸ばしてようやく下した。蓋がついているので何かわからない。
「パパ、持ってきたよ」
パパは体を起こしており、箱を自分の前に置かれると、埃を払って蓋を開けた。
ビニールが折りたたまれて入っていた。それから器、丸いのや長方形のもの。袋に入った薬みたいな塊。
目の細かい布の茶色くなった布の袋から、パパは粒をいくつか取りだした。
この器は鉢というそうだ。
「いいか、すのこで土をふるってごらん」
私は言われたとおりにする。
土の手触りは気持ちがよい。
「この土、ここの森の土じゃないね」
「ああそうだ」
パパの指示を受けて粒々を土に混ぜる。小石を鉢の底に敷く。
粒々を混ぜた土を鉢に入れる。
「その黒い種をそっと土の中へ」
針金を半円形に鉢の上に通して、パパはその上にビニールをかけた。
「こんなにたくさんのビニールがあったんだね」
ビニールは貴重品で、滅多に使うことはなかったのだ。
「大事なことのためにとっておいたんだよ」
とパパは言う。
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