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「お前達さぁ……その、付き合い出した?」
少し言い淀んで、翔に言われたのは、翔と秋夜と合流した三限だった。
講義室で、俺と大成が前、秋夜と翔が後ろの席で、分けて座っていると、後ろからそんな控えめな声がした。
相変わらず、構内では俺と秋夜が付き合っている事になっているので、どうやらそれに気を遣って声を潜めたらしい。
講義室は小さな部屋で、これまで小中高と慣れ親しんだ教室用な雰囲気のある部屋だったが、講義が始まる数分前で、既に適当な席に着いた学生達でガヤガヤとしていた。なので、俺達のひそひそ話を他に聞き咎める奴なんて居なかったと思う。
「はぁ?」
「いやぁ~、そう見える?」
ほぼ同時に、大成と俺の声が重なった。俺の方が気持ち大きめに声を出してしまい、比較的近くに座っていた学生なんかが一度こちらを向いたりした。
それには適当に片手を上げて、「すまん、なんでもない」とジェスチャーし、体と一緒に声も潜めて、翔と向かい合う。
「どっからどう見て、そう見えるわけ?」
あれ、違うんだ?と翔は笑った。「そう見えたから」と付け足され、不服な気分になる。
「まっ、秒読みかな!」
と、得意気な大成の、跳ねるような声も面白くない。「んなわけねーよ」と簡単に返した時、教諭がガラリと教室の扉を開けた。
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