3.夏 その2

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3.夏 その2

3.    試験が全科目無事に終了し、晴れて、明日より長い夏休みに入る。  件の旅行は、明日からを予定していた。 「なぁ、悪いんだけど……」  試験後の打ち上げと表し、俺のバイト先でもあるカラオケボックスで集まると、大成があんまり悪びれた様子もなく切り出した。 「俺、二日目から合流するから。先行っててくれねぇ?」 「はぁっ?」  突然のことに、(しょう)と秋夜は目を丸めていただけだった。しかし俺から発せられていただろう、不穏なオーラに、意外にも秋夜が反応した。 「………どうかしたの?」  ゆっくりとした調子で、理由を問う。 「光希(みつき)が」と、大成は切り出した。「熱出したらしくてさ。頼る人がいないらしいんだよね」 「………」  皆、黙った。  なんと言っていいのか決めかねているようだった。微妙な空気が漂う。暗く調節した照明の明かりが悪い意味で、より一層それを助けてしまう。画面から聞こえる明るい声のCMだけが、異質だった。無駄に煩い。 「………いいよ。別に」  誰かが何か言わないといけない空気の中で、やっぱり俺が口を開いた。 「気が済むまで、看病しろよ」  お前の優しさって、誰にでも向くんだな。  そんなことが、俺の心をイライラとさせた。なんだそれ、とも思ったし。このタイミングでそんなことを言い出した勇気も流石だと、変に感心もしてしまった。 「………悪い。明後日の昼の予定で合流するから……」  流石に俺の苛立ちを感じ取り、悪いと思ったらしい。  大成は珍しく、眉毛をハの字に下げた。
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