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『今日はほんと、ごめんな』
ホテルに再度戻り、部屋のシャワーを浴びた。
寝る前にベッドの上で、思い出したようにスマホを開くと、つい一時間前にメッセージが入っていた。大成からだ。
忘れていたわけではないが、目前の楽しさに自分の感情全てを乗せるようにして、時々敢えて、スマホを触らないようにした。大成への近況報告は逐一、秋夜がしてくれているみたいだったし。そうなると多分、俺の方にはメッセージなんて来ていないだろうから……とか、そんなことをチラチラと思ってしまった。悔しいけど、ほんと、まんまと呪いを受けている。
『別に』
簡単な返事を送る。……もう、寝ているだろうか?
あちらの夜はもうすっかり真っ暗で、道路に面した窓からでさえ、車が行き交うライトすら見せてはくれないだろうと思った。空には、無数の星が散りばめられていて、まるで見えてる風景が違うことだろう。
寝ているかというのは杞憂だったようで、直ぐに既読が付き、返信が来た。
ちらちらと、気にしていたのか?と思うと、なんだか愛お………否、可笑しくなった。
『明日は絶対、行くから』
「………」
開きっぱなしの画面。
送った瞬間に既読が付いたことを、大成はどう思っただろうか。
『あのワンコは? 元気になった?』
『光希? 七度代まで下がった』
『微熱あんじゃん』
『風邪薬も買ったし、ポカリやウィダーも買い揃えたし、ゼリーとかお粥とか置いてるから。もうへーき』
どんだけ甲斐甲斐しく世話してたんだ、と笑ってしまった。
『彼女かよ』
自然な気持ちで打てば、送信と同時に既読が付く。
世界は空で繋がっていると言うより、この画面の向こうで繋がっていると考えた方がリアルだった。漏れ無く、現代人だなぁと思う。画面越しに、大成の存在を感じる。
返信は先程までの軽快さが無くなり、既読が付いてからその返信を得るまでに、少しだけ待った。
ベッドの上で無駄に寝返りを打つ。
『ちげーよ。俺が好きなの、お前だもん』
「……………」
胸に。
何か、込み上げた。
「好き」だなんて。
(…………まだ口で言ったこと無い台詞じゃん……)
その込み上げたものを誤魔化す為の悪態も、なんだか……拗ねているような言葉になった。
いや、いやいやいや。………これじゃ、まるで………。
『はいはい。また明日』
返信を打つなり、画面を消した。寝よう。
早く、明日になればいい。
………無意識に、そう思ってしまう。
(……いや。これは……明日のスカイツリーとか浅草とか、楽しみだからで。それから……大成が東京にどんな反応するかなって、それが、楽しみだからで……)
誰が聞いているわけでもないのに、頭の中で言い訳を探して。
冷房を十分に効かせた部屋で、布団を頭まで被って、寝た。
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