鉛の海を泳ぐ

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 あのオーバードーズをした日からあたしたちは連絡を取るようになった。学校で話すことは絶対にしなかったけれど、よくFaceTimeをした。  話すことといえば学校の人の悪口、それから自傷、OD。おすすめの薬を教えられて二人で画面の前でODをした。  広葉は金パブが好きだったけれどあたしはどうしても好きになれなかった。だからあたしは家にあった正露丸とかバファリンを飲んだりした。  一瞬の快楽を得られたけどその後の副作用は大変だったし、何よりお金がかかった。貯めていたお年玉を切り崩した。よく薬局回りをした。  それからよく広葉はリスカを写真で撮ってあたしに送った。網目状に赤い線が引かれたその腕。線は日に日に多くなっていったし深くなっていった。  あたしも流されるままに自傷した。いつの間にかにカッターは錆びていた。  「やってはいけないこと」を二人でやるのがたまらなく嬉しかったのだ。二人で傷つけあうたびに生と幸せを実感していた。あたしたちはもう自傷なしでも薬なしでも生きていけなかった。  そして、あたしはODを親に見つかった。
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