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シリウス。リゲル。ベテルギウス。
カストル、ポルックス……
そして夜空の星達が走り出す。
人の命は地球より重い。
そんな言葉がある。
しかし、星もまた生き物ではないのか。
叶えたい想いがあるのではないか。
奇跡の一つや二つ起こしてでも、叶えたい想いが。
例えば、こんな場所に繋がれていたくはない、とか。
月は何処かへ飛んで行った。
命が心を呼ぶ声のまま。
地球を見守る任務から解放され、自由な宇宙の果てを目指して走り出した。
そして守り神とも言える月の、引力の影響を無くした地球も。
今、自由に走り出す。
暴れ始める。
自転は高速になり、地軸は歪む。
がくん、と大地が揺れた。
ごう、と風が吹き荒れた。
海は怪獣の様に立ち上がり口を開き、手始めに潮雄を飲み込んだ。
人類が生まれた奇跡。
そして滅びゆく奇跡。
もう神の奇跡でも止められない。
《完》
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