月の願いを

4/7
71人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
ケフェウス、くじら、ペルセウス、アンドロメダ…… 他の太陽系の惑星の衛星と比べて、地球の月は衛星としてはとても大きく、その引力は地球に様々な影響を与えている。 例えば潮の満ち引き。 月に星に手繰り寄せられる様に、気が付くと潮雄は堤防沿いを歩いていた。 満潮の海は、こんな季節に何をしに来たといわんばかりに、街中(まちなか)より更に冷たい風を吹かせてせせら笑う。 打ち寄せる波は氷の刃物の様に、海面に写った月明かりを削り取り、打ち寄せる時さらりと光を振り撒く。 『……タスケテ……』 その、海面に揺蕩う月明かりの真ん中に。 声の主は、いた。 ポケットから望遠鏡を取り出す。 星を見るにはやはり少しもの足りなかったが、潮雄の目に地上の奇跡をはっきりと見せてくれた。 あれは……人か!? それは月光に照らされながら、自身も妖しく光を放つ、海面に立つ女性の姿。 その輝きは幻想なのか、現実なのか。 ただ、天女という存在が降りて来たなら、こんな姿だろうと納得する程に美しい。 その首には鎖が繋がれている。 潮雄は神話のアンドロメダを思い出した。 鎖に繫がれ海の怪物ケートスの生贄にされたが、英雄ペルセウスに救われたアンドロメダを。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!