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ケフェウス、くじら、ペルセウス、アンドロメダ……
他の太陽系の惑星の衛星と比べて、地球の月は衛星としてはとても大きく、その引力は地球に様々な影響を与えている。
例えば潮の満ち引き。
月に星に手繰り寄せられる様に、気が付くと潮雄は堤防沿いを歩いていた。
満潮の海は、こんな季節に何をしに来たといわんばかりに、街中より更に冷たい風を吹かせてせせら笑う。
打ち寄せる波は氷の刃物の様に、海面に写った月明かりを削り取り、打ち寄せる時さらりと光を振り撒く。
『……タスケテ……』
その、海面に揺蕩う月明かりの真ん中に。
声の主は、いた。
ポケットから望遠鏡を取り出す。
星を見るにはやはり少しもの足りなかったが、潮雄の目に地上の奇跡をはっきりと見せてくれた。
あれは……人か!?
それは月光に照らされながら、自身も妖しく光を放つ、海面に立つ女性の姿。
その輝きは幻想なのか、現実なのか。
ただ、天女という存在が降りて来たなら、こんな姿だろうと納得する程に美しい。
その首には鎖が繋がれている。
潮雄は神話のアンドロメダを思い出した。
鎖に繫がれ海の怪物ケートスの生贄にされたが、英雄ペルセウスに救われたアンドロメダを。
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