月の願いを

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『……アナタヲ、マッテイタ……!』 なぜこんな所で鎖に…… ああ、何とかして助けないと。 『……ジユウニ、ナリタイノ!』 自由になりたい……! 一体何者なのかはどうでも良かった。 望遠鏡の中で妖しく輝く女性(ひと)が、そのか細い首に掛かった鎖を指差す。 潮雄はここ数日、聞こえて来る声に自分を重ねていた。 俺も自由になりたい。帰りたい。 生まれ故郷へ。子供の頃へ。 ……いや。 違う、そうじゃない。 本当はそうじゃない! 今の俺を縛っている鎖は何だ。 俺自身じゃないのか。 誰に助けを求めているんだ。 俺自身じゃないのか! 潮雄は、やっと気付いたのだ。 胸の中に瞬く銀河の星を辿れば、誰でも自分だけの星座がある。自分のカタチがある。 命が心を呼ぶ声に、やっと気付いたのだ。 諦めるな。 俺にはまだまだ出来る事があるはず。 今、あの人を助けられるのが俺だけである様に! 『タスケテ!』 助けるさ! そのために俺はここまで来た! 俺はなぜこんな所に繋がれているんだ、なんて。 星のない夜空みたいな毎日を。 真冬の海みたいな毎日を! 今日から俺は生まれ変わる! 縛られた鎖を振り切って! 『クサリヲ、ホドイテ!』 鎖を解くんだ!
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