猫に珈琲の味は分からない

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 祥子は気が付くと自分の家の近くのコンビニの前にいた、近道をした所までは覚えているがそこからここまでの記憶がどうにもはっきりとしない。  よほど疲れているのか、とも考えたが体に疲れたような感じはあまりなくむしろ会社を出る時よりもずっと調子がいい。  今までの自分の動きを思い起こそうとする彼女の前を、白い雪が通り過ぎた。  空は相も変わらずどんよりとしており、そこから更に雪まで降らせ始めたのだ。さきほどまでの、会社を出たばかりの彼女なら憂鬱になっていただろう雪。    だが何故だろうか、いまはそれも気にならない。  雪も、憂鬱な気持ちも溶かしてしまうような温かな何かが胸の内にあるのだから。  祥子は力強くコンビニへ歩き出した、今日の夜を豪華に彩るために。
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