猫に珈琲の味は分からない

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 猫は一匹で店の掃除をする、カウンターを拭きカップを洗いコーヒーの豆を補充し、棚の埃を払い最後の仕上げとしてストーブに灯油を足す。    そして一匹で椅子に座り、自分で淹れたコーヒーを飲みながら気持ちよさそうに目を薄めた。 「さて、次はどんな方がいらっしゃるんですかねえ……」  猫はほうとため息を吐きながら、天井を見上げていた。  リサイクルショップ・わ、それは人の持つ美しくも捨てられてしまった部分を扱う変わった店。  それはどこにだって現れる、東西南北どこの街にもあるいはあなたの街にも。  そこは少しだけほんの少しだけ、足を止めさせてくれる場所。  そしてもう一度歩くために、背中を優しく押してくれる場所。  猫はいつでも待っている、少し苦いコーヒーと共に。
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