猫に珈琲の味は分からない

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『天野さんってさ、良い人なんだろうけどちょっとムカつくよね。いかにも良い人って感じがさ』 『うわ、それすっごい分かる。何か優しくしてる自分に酔ってる感じするよね』 『良い子ちゃんアピールも大概にしとけって感じ』  大学を卒業してから入った会社で、祥子は事務職として働いていた。  彼女の周りに対する気遣いは、社会人になってからも続いていた。  二年目でできない事もまだまだあるが、それでもひたむきに働き続け自分の手が空けば忙しそうな人の仕事を手伝うなどやれるだけの事はやってきたはずだ。  だが今日の昼休憩で、つい給湯室にいた同じ職場の同期たちの話を聞いてしまった。自分に対する文句が出るわ出るわ、そこまで自分の事が嫌いだったのかと悲しみと驚きが同時に襲って来た。
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