猫に珈琲の味は分からない

5/22
前へ
/22ページ
次へ
 更に不幸な事に彼女は彼氏に振られてしまっていた、それも今日。  大学三年生から付き合っていた彼氏で、彼女から彼に対しての不満はあまりなかったが、彼はどうやら祥子の受け身な態度が段々と気に入らなくなったらしい。  つい先日会った時も、優しいけどつまらないと彼女は言われており二人の仲は順調とは言えなかった。  だがそんな小さなイザコザは今までも何度かあった、そしてその度に乗り越えてきた。  だから今度も大丈夫、自分から食事にでも誘って一言謝れば大丈夫と考えていた矢先の彼の言葉。 『別れよう』  たった四文字の言葉に、もう元には戻れないという確固たる事実が込められていた。  そんな最悪の週末を家で過ごすべく、彼女はいつもより足早に家へ向かう。  いつもはあまり飲まない酒も飲んでしまおう、家の手前にあるコンビニで食べたい物を片っ端から買って食べてやろうと歩く彼女の目に不思議な店が映る。  今日の祥子は早く家に帰るために近道をしていた、人通りが少なく薄暗いため二、三回しか使った事が無い道だったが、大体どんな建物があるという事は知っているはずだった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加