猫に珈琲の味は分からない

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「こんなお店……あったっけ?」  彼女の記憶が正しければ、この道には飲食店などの目立った店は無かったはずだ。  明かりの落ちたビル、シャッターの降りた店舗など寂しい雰囲気の道だったはずだ。  だが彼女の目には明かりの灯った、小さな店が映る。  茶色い木製のドア、その上部から優しい光が道に差し込んでおり、入り口の前には『リサイクルショップ・わ』と書かれた看板がぼんやりと光を放っていた。  いつもの彼女ならこんな店は目にも留まらないか、見つけたとしてもスルーしてしまうだろう。  だが物珍しさに加え、この日の彼女は悲しみなどのもうよく分からない感情がごちゃ混ぜになっており、つい勢いで店の中へ入ってしまった。
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