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恋には届かないけれど…
ピロロロロと着信音が室内に鳴り響いた。
おぼろげな目を擦りつけて、電話に出ると明るくハキハキとした男の声が聞こえてくる。
一見、いい印象を与える声なのだがその声は僕の休日をぶち壊す。
「もしもし、上野ですが」
寝起きなのがバレないように声には気を付けた。
「あ、佐藤ですが…お疲れ様です」
「お疲れ様です」
言葉に詰まりそうになる。
俺は夢の中にいたというのに会社からの電話一つで目を覚まさせられる。
『全く、休日もおちおち休んでいられないとは』
一応、俺の上司にあたる佐藤さんの電話には明るく応答している。佐藤さんは物凄く気の使える、尊敬できるような上司だ。
電話の内容は、俺が担当しているお客さんが注文していた商品がいつ頃入荷するのか、という確認の電話だった。
『この前電話しただろうが』
そんなことを考えながらも、その旨を伝え電話は切られた。
何か失態をしたのではないかという冷や汗をかいた為、もう眠りにつくことは無い。
こうして、仕事気分の休日が始まる。最低最悪の気分だが、これも仕方のないことだと最近は割り切ってしまっている。
俺は寝覚めのコーヒーをすすり、今日するべき事を脳内に思い描いた。けれども、俺の休日はいつも同じ事をしている為、考える必要なんて皆無だった。
コップ一杯のコーヒーを飲み終え、俺は自分の机に置かれたパソコンを開く。
手慣れた手つきでパスワードを打ち込み、小説投稿サイトを開いた。
そこには俺の作品があり、アクセスされた回数を確認したのだがすずめの涙ほど。アクセスされた回数よりも俺がアクセスを確認した回数の方が多いだなんて笑けてしまう。
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