兄が弟に耳かきするだけ

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奥にあるという「小さいの」を取るためか、兄の持つ綿棒は慎重に、俺の耳の深いところまで入り込んできた。 ずずず、と進む綿棒が、やがてぴたりと止まる。 先端が鼓膜の手前あたりまで来たような感覚があり、俺の心臓は静かに加速し始めた。 「…」 ぴんと糸が張り詰めたような緊張。 下手に綿棒を動かせば奥がズキリと痛むだろうし、最悪の場合は鼓膜に傷をつけてしまう領域だ。 しかし兄の綿棒は、とても器用に動いた。俺に一切の痛みを与えず、普段自分で耳の手入れをする時には触れないようなところまでを、綿棒で柔らかに撫でる。 痛くないぎりぎりのところを擦られているというスリルを楽しんでいる自分がいて、俺は少し驚いていた。ここまで綿棒を深く入れたのは初めてだったが、これは中々良いものではないかと思う。 「…ふぅ。とれた」 兄がそう言って綿棒を引き抜くと、俺はほっと息をついた。 「じゃあ、今度は耳かき使うね」 「オッケー」
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