兄が弟に耳かきするだけ

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俺の兄はちょっと変わっている。 日曜日の昼下がり。兄は、ソファでダラダラしていた俺に向かって突然「耳かきをしてみたい」などと言い出したのである。 「よし、じゃあ始めるぞー」 …それに躊躇いなく応じてしまう俺も俺かもしれない。 俺は現在右耳を上にして、実の兄に膝枕をされている状態である。一体俺たちは兄弟で何をしているのだか。 「まずは綿棒から…いや。せっかく耳かきするなら、耳のマッサージからしっかりとやろう」 「ほ、本格的…だな?」 「せっかくだからね」 ふに、と俺の右耳たぶが兄の指で柔らかくつままれる。ふにふにと耳たぶを揉まれるのは何とも言い難い不思議な心地であったが、案外悪くない。兄の指はそのまま程よい力加減で上に動いていき、ぎゅ、ぎゅと耳の淵をほぐしていく。 「いかがですか、お客様。痛くはありませんか」 兄がまるでどこかのお店の店員みたいな口ぶりで言うので、俺は吹き出しそうになりながらもそれに乗っかってやる。 「はい、大丈夫ですよ」 「良かったです。では内側の方も、失礼いたしますね」 ぎゅっ、ぎゅっ。くに、くに、くに。 兄の指は俺の耳の淵から、内側の方へと移動していく。耳の軟骨の凹凸に沿って、細めの兄の指が丁寧に動く。
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