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⑫ 梁瀬陽一郎side 2(※R18描写少しあり)
全額無料優待券。
そんなモノ存在しなかった。
只、誘って親睦を深めたかったが故の、罪の無い可愛い方便だ。
知り合いの店だから行きつけには間違いないけれど、あの店には株主優待券ならあるが全額無料なんてもの、存在しない。
行きつけだから纏めて家に請求するよう融通してくれてるだけ。
でもすんなり信じてくれて、差し向かいで食事してくれた鈴木さん。
肉好きなんだな~。
もりもり食べてるの可愛い。
食べ方、男っぽいのに綺麗だな。
鈴木さんがあんまり美味しそうに食べるもんだから、勧められてつい僕も口にした。
どうせ砂を食むように何の味もしないだろうと思ったのに、口に入れた瞬間から肉の香りと噛み締めた肉汁のジューシーさが舌に染み渡る。美味い。
(え、何で…美味い!)
純粋な驚き。
どれくらいぶりだろう、食べ物を美味しいと感じるなんて。
そんな僕の様子を見て、鈴木さんは不思議そうにしていたが、嬉しそうでもあった。
もしかして、彼か。
彼の存在が、僕のメンタルに影響しているんだろうか。
(…やっぱり、付き合いたいな…。)
目の前の彼を見ていると、やっぱり諦めたくないなと思った。
やっと、せっかく。
せっかく、初めて、自分から関わりたいと思った人に出会えたのに。
祖父と父の顔、忌々しい婚約者の顔が脳裏に浮かぶ。
……何故、僕が。
何故僕が、こんな年齢で この先の人生を全て、諦めなきゃいけないんだろう。
会社や家同士の利害関係とか、僕が背負う必要、あるんだろうか。
僕が犠牲になって得をするのは僕じゃない。
確かに僕はαだけど、αだから必ず子孫を残さなきゃならないって理不尽じゃない?
しかも相手がもう少し普通の人なら、お互い歩み寄って良い関係を築いていく努力をしようとも思えるだろうけど、あのクセ強が相手では…。
しかもだよ、僕、ネコだからね。
ネコ×ネコってだけじゃなく、苦手というより嫌いな相手。
忍耐だけじゃペニスは勃たない。
考えれば考えるほど暗雲しか無いな。
シャンパンの酔いも回ったのか、つい口が軽くなった。
「奪って下さい、僕を。」
家や仕事の重圧からも、最悪の婚約からも、全てから僕を奪って逃げてくんないだろうか。
尿意で目覚めたら見知らぬ部屋だった。
薄暗い部屋に目が慣れるのを待って周囲を見渡すと、ベッドの上のようだ。
ベッドから直ぐキッチンが見えるような簡素な部屋。一人暮らし…だろうな。
少し離れた所にあるソファに誰か寝てるよう。鈴木さん、かな。
壁には僕の上着が掛けられている。
とにかく、トイレ。
起こさないようにベッドから降り、壁伝いに歩いてトイレを探した。
手を洗って、ついでに顔を洗って、口を濯いで部屋に戻るとソファの横に屈み込み、顔を覗き込む。
やっぱり鈴木さんだった。
寝顔可愛い…。
あの店から酔っ払った僕を連れ帰って介抱してくれたのか…。
悪い事しちゃったなあ。
やっぱ優しい。
しかも、上着やネクタイも脱がせてくれて、ベッドを譲ってくれて、布団も掛けてくれて、自分はソファで身を縮こまらせて寝るなんて。
キュン、と胸が高鳴った。
普通の事なのかもしれない。でも、そんな普通の事を、皆が出来る訳じゃない。
目を閉じると一気にあどけなくなった鈴木さん。
健やかな寝息と少し開いた唇。
どうしようも無く愛しく感じてしまうのは何故だろう。
いくら好みど真ん中ったって、会ったばかりの人なのに。
こんなに一気に気持ちが入ってしまうなんて、危険だ。
頭ではそう思うのに、理性がセーブ出来ない。
指先でその唇に触れるとほんのり温かい。
頬を撫でてみると、思いの外滑らかだ。
顎のあたりに少し傷跡。髭剃り失敗したのかな。ふふ、器用そうに見えて案外ぶきっちょなのかも。
小さなその傷跡をなぞると、鈴木さんが んん、と小さく呻いた。
くすぐったかったのかな。
(…愛おしいな…。)
唇を奪った。
温かい。下唇が少し分厚くて肉感的。
唇の輪郭を舌先でなぞる。
綺麗な形。
生々しい呼吸の匂い。興奮する。呼吸ごと奪う。
顎の傷を舐める。
輪郭に沿って唇を這わせる。
彼は身じろいだが、起きる気配は無い。
鼻先にちゅ、と唇を落として 触れたかった首筋から鎖骨に吸い付く。微かに体臭とボディーソープの混ざった匂い。
帰ってからシャワーでもしたのかな。残念。
Tシャツをたくし上げると、思っていたよりも割れた腹筋にゾクリとした。
なんて素敵な体だ。
ああ、痕をつけとかなきゃ。
誰にも取られたくない。
スウェットパンツを下着ごとズラすと、陰毛は多目、暗いから色はよくわからないけど、茶色っぽく見える。
その下に、萎えたペニスと重量感のある睾丸がボロンと横に流れた。
ごくり、と思わず喉が鳴る。
さわさわと陰毛を梳き、ペニスを撫でてみると、素直に半勃ちになる。
やっぱり大きい…。
根元を擦ると硬さが増して、力強く脈打つ。睾丸もずしりと重くなって、射精する寸前にはもっと重くなるのかと思うと、濡れない筈のアナルが濡れるように熱く感じた。
あ~、やっぱり欲しいな、この人。
こんなに独占欲を煽られた事なんて、これ迄無かった。
Ωにも女性にも興味が無く、匂いは感じても反応出来ず、その上 Ωのように男に抱かれたいなんて。
父や祖父には言えない秘密。
やっぱり僕は出来損ないのαなんだと思いながら、鈴木さんのペニスにむしゃぶりついた。
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