…王道…?(古)

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…王道…?(古)

「お前らアレスに悪いと思わないのか?」 聞き慣れない声だ。 2人して声の方を見ると、ふわふわしたストロベリーブロンドの髪に、俺より少し小柄な少年。 ストロベリーブロンド…。 それは…地毛、か? 「婚約者を裏切って、番とか最低だな!!」 「……?」 (誰か知ってる?) (わかんない。見た事ない子だね。) エリオと目と目で会話するが、エリオも困惑している。 いやマジで誰。 「…どなた?」 「留学生のマクリルだよ!! アンタ、教室にいたじゃねーか!! 今朝皆に挨拶した時見たぞ、1番前の席にいたじゃん!!」 ストロベリーにビシッと指を指される俺。 …留学…生?挨拶…? 記憶にないな。 だって俺は近くて遠いエリオの身を案じるのに忙しい。 「マクリル様ですか。 それは、失礼致しました。」 俺は席を立ち、余所行きの笑顔を張り付けて優雅にお辞儀をしてみせたが、 「嘘くせぇ笑顔してんじゃねえよ!」 と言われてしまった。 エリオがブワッと怒りの圧を出す。いや待て待て待て。 「君、話した事も無い他人にその言葉遣いはいくら何でも失礼なんじゃないのか。」 「エリオ、大丈夫だよ、落ち着いて…。」 ほんと待って待って。 エリオが苛立ちを顕にすると、少しビクついたストロベリーだったが、 「…あ、そ…だよな。頭に血が上って…。すみません。」 と、意外にも素直に謝罪してくる。 ん? 端々からの特徴で、懐かしの王道とかかなって思ったけど、違った?か? 「俺、今朝この学園に来て、」 季節外れの、ってやつね。うん。 「直ぐにアレスとダチになって、」 アレス?王太子の名前だよね?もう呼び捨てなんだ?うんうん? 早くない? 「アレス、最近辛かったけど俺が来てくれて元気出そうって言うから、何があったのか話聞いてて…、」 大体読めて来た読めて来た~ 「婚約者と、婚約者がいるってわかってるのに言い寄って来た奴らに、裏切られて婚約破棄されたとか聞いて、」 ……ポンコツ殿下、てめぇ💢 そこ迄聞いて、おおかたの事を理解した俺達は頷き合い、取り敢えず俺はエリオの向かいから隣の席に移動。 ストロベリーを俺が座っていた向かいの席に座らせた。 「先ず、自己紹介をしましょう。 私は隣国イクスの公爵家の4男、セス・リスタニアです。 此方はエリオ・レニングスト様。この国の公爵家の次男で、私の番の方です。」 俺が滔々と述べると、エリオが無表情で会釈をする。 怒っとる…。 ストロベリーが頷き、やはり会釈しながら話した。 「マクリル・フォレスト。 ギアナ国から来ました。 父さんが亡くなって、この国に侯爵してる祖父がいるのがわかって引き取られました。 だからこの間迄は平民でした。」 ぺこり。 あ、なるほど。 だから開けっぴろげな話し方なんだな。 貴族間には無い感じだから違和感はあった。 「君がフォレスト侯が引き取ったって言うお孫さんか。」 エリオは知ってたらしい。 「平民出身でしたのなら、貴族間の事は覚えていくのはこれからでしょうね。 ですが、知らないならば知らないなりに、お祖父様のお顔に泥を塗るような言動は控える方がよろしいかと。」 …久々に塩エリオ見た。 対王太子モードの時のやつだ。 ストロベリーはそれを聞くと、途端にシュンとして、 「そうだよな…ごめんなさい。」 と謝罪した。 美麗過ぎる顔で無表情で怒られるのも怖いけど、どうやらお祖父さんがウィークポイントの様子。 というか、思ってたより素直だ。 単に少し熱し易いだけなのかもしれん。 それにしてもあのポンコツ王太子め。 ストロベリーが何も知らないのを良い事に、好きなように捏造してくれたらしいな。 ストロベリーを観察してみると、なかなか可愛い顔をしているし、おそらく次のターゲットなのだろうか。 上等だ。 俺はこう見えて、売られた喧嘩は買い叩いて転売する程 買い漏らさない男…。 (王道フラグ、叩き折ってやるぜ。) 俺は運ばれてきた紅茶を冷まして一口飲んでから、 「では、実際の事の顛末をお話致しますね。」 と、ストロベリーに満面の笑みを向けて言った。
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