αは正直、好きじゃないΩ

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αは正直、好きじゃないΩ

「なっ、な、な、な?」 「7?」 首がカクッとなって、その弾みで目を覚ましたエリオは暫く薄目でぼんやりして、徐々に状況を把握。 肩に掛かる何かに気づいてブランケットを見つめ、そして隣にいる俺に気づいた。 「お目覚めですか?エリオ様。お風邪を召されますよ、このようなところで。」 俺はにこりと微笑んで首を傾げてみせた。 …スンッ… 見事に、スンッて感じで感情の無い目で見られた。 やっぱりあざと系は駄目か~。 「これ、君の?」 エリオは肩からブランケットを引っ張って、俺に聞く。 「…差し出がましい真似を致しまして…。」 俺は謝罪。 よかれと思ってやった事だけど、それで礼を言ってもらえると期待するより、余計な事してすいません、っと謝らないといけないのが人付き合いのめんどくささだよね。 それに、寒そうだと思ったのは俺。勝手に掛けたのも俺だし…。 「…ありがとう…。」 てっきり、余計な事すんな!とか罵倒されると思って身構えてたのに、思いがけず礼を言われてびっくりした。 あ、あれえ~? 「あったかいな…ふふ。」 エリオはブランケットを頬にあて、少し微笑んだ。 驚愕に見開かれていた俺の目は更にそれに釘付けに。 えっ、かわ…可愛い…ね? すると、直ぐにハッと我に返ったらしいエリオは俺を見て、しまったという顔をした。 …ん?そのしまった顔は、何? 「よ、余計なお世話だよっ!」 そう言ってブランケットを肩からバッと引き下ろし、またハッと気づいていそいそと丁寧に畳んで俺の膝にそっと乗せ、リテイクって感じで、 「余計な事してんじゃねえよ!!」 と、俺を指差して叫んだ。 (……??) 俺の頭は??だらけである。 …何?今のこの、一連の流れ…。 俺の微妙な顔での沈黙に エリオは 「えっ、、と、その… とにかく、私は大丈夫なんで!風邪とか心配しないでいいから!!ありがと!!」 …と、言い残し、荷物を纏めて行ってしまった。 「…何だったんだ…?」 エリオ様、アンタ…? 何かある。あの人、何か隠してるよな。と、俺の悪い虫が疼いた。 それに、バース性の不明なのも気になる。 俄然、エリオに興味が湧いている。 だって、王太子や貴族の主立った貴公子達にはもういい加減嫌気がさしている。 臭いんだ。臭いんだよ!! α臭い、男臭い!!! 俺に必要なのはムンムンした暑苦しいα臭じゃなくて、甘く爽やかな優し~い匂いなの。 いや別にそれがΩの匂いじゃなきゃとか、そういう訳ではなくて、好みの美人の匂いが嗅ぎたいのよ。わかる? Ωはαと番うべきだとか、そういうのマジで辟易する。 物心つく前から、俺にΩはαに隷属するだけのモノだ、って洗脳するかのように言い続けてた父や兄達のα至上主義を思い出して、嫌な気分になる。 α家系に産まれたΩの肩身の狭さよ…。 立場の弱い子供の俺は、只黙って言う事を聞く良い子でいるしかなかった。 つまり今の俺は、自分で言うのもなんだが、父や兄を始めとする、野郎共の理想のΩを具現化したようなもの。 容姿は楚々として、触れなば落ちん…みたいな儚げな風情で、なよやかで、庇護欲を唆る、ような? その反動なのか、性格は糞みたいに仕上がってる訳だが。 いや顔はさ。 顔はΩの母上譲りだから。自分で選べたならもっと自分好みの顔にしてるわ。 特にこの、野郎共に好評な、霞んだようにゆらゆらして見えるらしい、目が嫌。 薄い金髪も嫌。 なよっちい体も嫌。 だってこれじゃかわい子ちゃん達に好かれないからな。 「…エリオのタイプって、どんな男なんだろ。 やっぱ王太子みたいな金髪長身イケメン?」 自分の顔を姿見に映して、何となく呟いてしまう。 あー、なんだか気になる、、 もっと近くでエリオと話せるようになりたい。 彼奴が何考えてるのか、知りたい。 あの睫毛を触ってみたい。 俺は初めて、悪趣味な略奪ゲーム以外に他人に興味を持った。
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