その背中を追って

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 僕と安彦は幼馴染。幼い頃から共に短距離走に打ち込むライバルでもある。  ――ライバルと言っても、戦績は僕の連戦連敗。安彦が常に僕の一歩先を行く関係だ。それでも僕らがライバル関係にあると明言できるのは、誰よりも安彦がそれを望んだからだった。  彼曰く『俺が速くなれるのは、いつもアイツが背中に迫ってくるからだ』だそうだ。何となくむず痒いものがある。 「安彦はさあ、なんで僕なんかを『ライバル』って言ってくれるんだ? 県レベルでも他にも速いヤツはいるのに」 「そりゃあ、今はな、あいつらの方が速いだろうさ。でもな、のびしろだけで言ったらお前の方が遥かにあるんだよ。どっちが怖いかって言ったら、俺はお前の方が怖いと思うぜ? きっと高校生になる頃には、もっと速くなってる!」 「そう……なのかなぁ」 「俺の太鼓判だぜ? ありがたく受け取れよぉ!」  うりうりと僕を肘で突きながら、真夏の太陽みたいな笑顔を見せる安彦。  それにつられて僕も思わず笑う。確かに、僕のタイムの伸びは著しい。コーチからも随分と期待をかけられているらしい。  それでも僕は、安彦こそが主役で僕は脇役だと思っている。僕が一つ成長するたびに安彦も一つ成長している。僕らはそういう関係で良いのだ、と。
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