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『お先ぃ!』
不敵な笑みをこちらに向けながら、安彦がゴールの向こう側へ消える。
その背中を追ってゴールを駆け抜け……気付けば僕は、トラックのただ中に舞い戻っていた。
それに少し遅れて他の選手がゴールする。僕は一位だった。
遠くから、コーチや陸上部の仲間達が僕を呼ぶ声が聞こえた。観客席の方へ目を向けると、皆が笑顔でこちらに手を振っていた。
――その中でひと際目立つ、杖を振り回し大喜びしている奴の姿を見ながら、僕は心の中でそっと呟いた。
「やっぱり、まだまだ君には勝てないよ、安彦」
(了)
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