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キリクはそう言うと、んーっと大きく伸びをする。
空を見上げると、近くをミリナの使い魔であるネヲが飛んでおり、その向こうには大きな御魂の大樹の姿が見て取れた。青空を背景にザヴィルシャーユの中心にあるこの大きな御魂の大樹は、大陸のどの場所からも見ることが出来るのだ。雲一つない晴天を見上げていると、本当にこのザヴィルシャーユに魔王が存在しているのか疑わしくなってくる。
「でも、いるんだよな」
キリクは眩しそうに空を見上げながらそう言った。
「キリク?」
「あ、悪い」
急に立ち止まってしまったキリクへ、ミリナが不思議そうに声をかけた。キリクはミリナに視線を向けると、すぐに歩き出す。緑に覆われた平原が続いている。比較的おとなしいモンスターたちはキリクたちを見るとその道を譲ってくれた。戦いを挑んでも敵わないことが、本能で分かっているのだ。
キリクとミリナはこの三年、ギルドの依頼をこなしながら旅支度を着々と調えていった。その結果、この村の周辺にいるおとなしいモンスター程度では何の障害にもならなくなっていたのだ。加えてギルドの依頼で、この辺りの草原は歩き回っていた。モンスターの暴走が起きない限り、キリクとミリナを襲うモンスターはいないのだった。
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