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そうしてしばらく平原を歩いていると、少しずつ雲行きが怪しくなっていった。
「一雨、来るかな?」
キリクは空を見上げながらそう言う。
魔王が復活してからと言うもの、ザヴィルシャーユの天候は不安定になっているのだ。急に天気が悪くなり、雨が降り出すことは日常茶飯事であった。キリクとミリナもこの急な天候変化に動じることもなく、旅路を歩いて行く。その傍を荷車が何台も追い抜いていくのだった。
そうして歩いていると、草原に大きな一本の木が見える。ここまでがキリクたちの村にあるギルドの管轄内だった。この大きな木の向こう側は、キリクには未知の世界となっている。
いよいよ、本当の意味で冒険が始まる。
気を引き締め直すキリクが木に近付いていくと、その木にもたれかかって誰かが立っているのが見えた。
「あれは……?」
キリクが目を凝らしてみると、その人物はキリクとミリナに気付き片手を挙げる。その仕草にキリクは見覚えがあった。
「バルドート先輩じゃないですか!」
キリクはぱぁっと表情を明るくさせると、
「ミリナ、行こう!」
「あ、待って!」
ミリナの手を引いて一本の大きな木へと駆け寄った。
「バルドート先輩!」
「よぉ、キリク」
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