一、ザヴィルシャーユ

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 そうしてしばらく平原を歩いていると、少しずつ雲行きが怪しくなっていった。 「一雨、来るかな?」  キリクは空を見上げながらそう言う。  魔王が復活してからと言うもの、ザヴィルシャーユの天候は不安定になっているのだ。急に天気が悪くなり、雨が降り出すことは日常茶飯事であった。キリクとミリナもこの急な天候変化に動じることもなく、旅路を歩いて行く。その傍を荷車が何台も追い抜いていくのだった。  そうして歩いていると、草原に大きな一本の木が見える。ここまでがキリクたちの村にあるギルドの管轄内だった。この大きな木の向こう側は、キリクには未知の世界となっている。  いよいよ、本当の意味で冒険が始まる。  気を引き締め直すキリクが木に近付いていくと、その木にもたれかかって誰かが立っているのが見えた。 「あれは……?」  キリクが目を凝らしてみると、その人物はキリクとミリナに気付き片手を挙げる。その仕草にキリクは見覚えがあった。 「バルドート先輩じゃないですか!」  キリクはぱぁっと表情を明るくさせると、 「ミリナ、行こう!」 「あ、待って!」  ミリナの手を引いて一本の大きな木へと駆け寄った。 「バルドート先輩!」 「よぉ、キリク」
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