一、ザヴィルシャーユ

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 キリクがバルドートと呼んだ人物は、キリクよりも年上の青年だ。長い赤銅色の髪を後ろで一本に縛っている。髪と同じ色をした瞳を優しく細めながら、キリクへと声をかけてきた。 「こんなところでどうしたんですか? 先輩」 「お前たち、今日が出発の時なんだろう?」  キリクの疑問にバルドートが問いかける。その問いかけにキリクは頷くことで返した。するとバルドートは、 「じゃあ、お前たちも晴れて冒険者ってことだ!」  そう言ってにやっと笑った。キリクにはバルドートが何故こんなにも嬉しそうなのか分からなかったが、彼には村にいた頃にギルドの仕事について色々と教わった恩義がある。キリクは黙ってバルドートの次の言葉を待った。バルドートは嬉しそうな表情をそのままで、 「キリク。手合わせを願おう」 「え?」  キリクは一瞬何を言われたのか分からない。そんなキリクへバルドートが呆れたように口を開いた。 「おいおい、忘れたのか? 冒険者同士は手合わせをしてもいいって決まりを! そうして切磋琢磨して、魔王を倒す力を手に入れるってことを!」 「あ……!」  バルドートの短い説明にキリクが何かに気付いたような顔をする。
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