6人が本棚に入れています
本棚に追加
このザヴィルシャーユでは、私闘は厳禁とされていた。ただし、冒険者同士は別だ。しかるべき手順を踏むことにより、力比べをすることが許されている。キリクはそれを思い出したのだ。
「俺、一度キリクと手合わせしてみたかったんだ」
バルドートはそう言うと、にっとその笑みを深くした。その笑みにキリクもつられて笑顔になる。
「先輩、俺の初めての手合わせ相手になってください!」
「喜んで!」
キリクの言葉にバルドートも即答する。
「ミリナ! お前は手を出すなよ! これは俺と先輩の力比べだからな!」
キリクは黙ってバルドートとのやり取りを見守っていたミリナを振り返り、そう言った。ミリナは呆れたように小さくため息を吐き出すと、そのまま黙って一歩後ろへと下がった。
キリクはミリナが今回の力比べに手を出さないことを確認した後、バルドートに向かって胸の前で合掌をする。
「では、先輩」
「分かった」
バルドートもキリクへと向き直るとその胸の前で合掌をした。二人はしっかりとその目を見つめ合い、
『御魂の大樹の加護のもと、オルヴァメイション』
息を揃えてそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!