一、ザヴィルシャーユ

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 このザヴィルシャーユでは、私闘は厳禁とされていた。ただし、冒険者同士は別だ。しかるべき手順を踏むことにより、力比べをすることが許されている。キリクはそれを思い出したのだ。 「俺、一度キリクと手合わせしてみたかったんだ」  バルドートはそう言うと、にっとその笑みを深くした。その笑みにキリクもつられて笑顔になる。 「先輩、俺の初めての手合わせ相手になってください!」 「喜んで!」  キリクの言葉にバルドートも即答する。 「ミリナ! お前は手を出すなよ! これは俺と先輩の力比べだからな!」  キリクは黙ってバルドートとのやり取りを見守っていたミリナを振り返り、そう言った。ミリナは呆れたように小さくため息を吐き出すと、そのまま黙って一歩後ろへと下がった。  キリクはミリナが今回の力比べに手を出さないことを確認した後、バルドートに向かって胸の前で合掌をする。 「では、先輩」 「分かった」  バルドートもキリクへと向き直るとその胸の前で合掌をした。二人はしっかりとその目を見つめ合い、 『御魂の大樹の加護のもと、オルヴァメイション』  息を揃えてそう言った。
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