一、ザヴィルシャーユ

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 キリクの動きに隙が出来る。その隙を逃さず、バルドートは即座にキリクの背後を取った。両手剣を振り抜いて動けない、一瞬のキリクの隙にバルドートは容赦なくその二振りの剣を振るう。しかしキリクもそのバルドートの気配を察知し、その身をかがめることによりバルドートの剣に虚空を斬らせた。それから上体を反転させ、キリクはその勢いのまま両手剣を再び横になぎ払う。バルドートはその剣を危機一髪でよけた。  二人の攻防戦を黙って見守っているミリナは、 (二人で何をじゃれ合っているのでしょうか……)  そんなことを思いながら呆れるようにため息を吐き出した。それでもキリクの言葉を守り、二人の力比べに手を出すことはしない。 「先輩ももう、歳だし! そろそろ、くたばってくださいよっ!」  キリクは両手剣がなかなかバルドートに当たらないことを楽しむかのようにそう言う。それを聞いたバルドートも、 「まだまだ!」  そう言ってキリクの剣を翻弄していく。  一進一退を繰り返す二人だったが、若干キリクが有利かのように見えた。バルドートはキリクの両手剣の重さに押され、その立ち位置を少しずつ後退させていたのだ。そして気付けばその背のすぐ後ろが大木となり、バルドートは退路を断たれてしまう。 「貰った!」
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