6人が本棚に入れています
本棚に追加
キリクはこのチャンスを逃さない。右足をぐっと踏み込むと、その勢いのまま両手剣を上からその重さのままに振り下ろした。これは確実にバルドートが負ける。観客がいたら誰もがそう思ったことだろう。しかし、
「……っ！」
バルドートは二振りの剣を交差させ、大ぶりのキリクの両手剣を受けとめた。剣と剣がぶつかる激しい音が周囲を包む。
そしてバルドートはそのままキリクの目を至近距離で見ると、にっと余裕の笑みを浮かべて受けとめた両手剣を弾いた。一瞬宙に浮いた両手剣の隙にバルドートはキリク以上の身軽さでその姿をキリクの眼前から消す。
キリクの両手剣はまたしても獲物を捕らえ損ね、そのまま地面へとめり込んだ。キリクが慌ててその両手剣を持ち上げようとした次の瞬間、
「終わり」
そう言ったバルドートの剣が一振り、キリクの眼前に突き立てられていた。キリクはその剣に一瞬目を丸くしたものの、
「あーあ、完敗です！」
そう言って自らの両手剣からその手を離した。
最初のコメントを投稿しよう！