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「この世界を、救えるものなら救ってみるがいい」
絶対存在――この世界の誕生や消滅のみならず、人々の記憶や未来にまでも影響力を持った存在。
繰り返される時間の流れは無限であり、永遠に続いていく営みの一部なのだと、そう信じて疑わなかった。この世界の誰しもが、世界の終わりを予想していない。
しかしその時は確実に近付いてきていた。
絶対存在の手によって奪われる世界、未来……。
人々はこの絶対的な存在に、抗うすべを持っていない。
知らず知らずのうちに奪われ、失われ、消滅へと導かれてしまう……。
それは記憶にすら残らない、完全なる無。存在の消去。
※ ※ ※
「そう、全ては決められた宿命。抗うことなど出来ない。この、絶対存在の前ではな」
「黙れ!」
大人びた少女の声を前に、一人の少年が一喝した。
周囲は嵐でも来ているかのように暗く、天候は荒れ模様だ。木々の枝や葉は舞い上がり、その強風にただその身を任せるのみとなっている。
少年はそんな中、真っ直ぐに少女を見据える。少女の長い髪もまた、吹き荒れる嵐の風に舞い、その姿は禍々しさを感じさせるのに十分だった。
「俺は、俺たちの未来は、俺たちが切り拓くんだ!」
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