一、ザヴィルシャーユ

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 穏やかな気候に恵まれ、平和な大陸世界、ザヴィルシャーユ。  そこには(いにしえ)より『御魂の大樹』と呼ばれる、人々の命を宿した大樹が存在していた。御魂の大樹に生い茂る青々とした葉、それら全てがこの、ザヴィルシャーユを生きる者たちの命であり、その葉が落ちる時、人々の命もまた散ってしまう。  そんな御魂の大樹は、ザヴィルシャーユを治める王都によって守られていた。  では、御魂の大樹は一体何から守られていたのか。  ザヴィルシャーユには魔王が存在していたのである。  この魔王を倒した者は勇者となり、王都から莫大な謝礼を得ることとなる。しかし、魔王は倒されてから五年の月日を経て蘇るのだった。  魔王が倒され勇者が誕生した後、五年間、腕に自信のある者たちは冒険者となり、ギルドの依頼をこなしながら来るべき魔王復活に向けて力を付けていく。  この魔王の輪廻は、ザヴィルシャーユの日常であり、魔王は勇者によって倒される者であるという認識が、人々の中には根付いていたのだった。  さて、そんなザヴィルシャーユで生まれ育った一人の少年がいた。彼の名はキリク。  キリクは濃い茶色のクセのある髪を風に遊ばせながら、新たに始まる自分の人生に胸を躍らせていた。 「本当に行ってしまうの? キリク」
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