一、ザヴィルシャーユ

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 ギルドマスターはキリクへと問いかけた。キリクは誰もいない自分の隣を見やる。今回旅立つにあたり、キリクの冒険に付いてくると言って聞かなかったミリナの姿がまだ見当たらないのだ。 「ミリナのことです、きっとまだ寝ているのかもしれません」 「そうか、そうか」  ギルドマスターはフォッフォッと笑っている。  正直キリクは、今回の冒険者としての旅にミリナを連れて行くことを迷っていた。  ミリナはキリクの幼なじみである。引っ込み思案でおとなしい性格の彼女は、魔法の腕は一流でもコミュニケーション能力に少々難があった。それに何よりも優しい性格のミリナを、これから始まる戦いの日々に巻き込みたくはないと、キリクは考えていたのだ。  だからキリクはわざと出発の時間を一時間遅く、ミリナに伝えていた。そうすることで自分一人だけで旅に出るつもりだったのだ。しかし、 「キリク!」  慌てたような声が聞こえ、振り返るとそこには慌てた様子のミリナの姿があった。ミリナは水色のボブヘアーに寝癖をつけながら、ギルドマスターへと挨拶をするキリクの元へと駆けてくる。魔法使いの印であるローブも着崩れており、ミリナが本当に慌てていることが見て取れた。 「酷いです、キリク! 私を置いていくつもりだったんですねっ?」 「ミリナ……」
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