一、ザヴィルシャーユ

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 ギルドマスターは白く長い眉毛に覆われている両目を優しく細めると、二人の背中を押した。ミリナは改めて姿勢を正すと、 「今までお世話になりました」  そう言って頭を下げる。キリクもまた、ミリナにならって頭を下げるのだった。  こうして少しバタバタしてしまったキリクとミリナの旅立ちではあったが、二人は村を背にして慣れ親しんだ道をまずは北へと進んでいくことにした。 「まだ怒ってるのか? ミリナ」 「怒ってません」  北を目指して進んでいる道中、キリクはぷぅっと両頬を膨らませ黙ってしまったミリナに声をかけた。ミリナはキリクの問いかけに彼の目を見ることなく即答する。しかしその態度が明らかに機嫌を損ねていることが伝わってくるため、 「怒ってんじゃん……」  キリクはそう小声で言うと、はぁ……、と小さく息を漏らした。  二人の今後だが、北にあると言う大きな町にあるギルドで、魔王に関する情報収集を行う予定だ。これは村を出る前から二人で話し合って決めていたことだった。  二人の移動はもっぱら徒歩である。お金を払えば馬のような大きな草食モンスターが運ぶ荷台へ乗せて貰えるのだが二人はそれを断り、わざわざ徒歩を選択したのだ。 「やっぱ、歩いてる速度がいちばん、情報を集めるのに向いてるんだよなぁ」
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