ふっかつのじゅもん。

2/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 こういう考察もまた、ゲームの醍醐味なのである。ノベルゲームならば、選択肢が出ない限り方向性は選べない。しかし、このゲームはキャラクターをプレイヤーが自ら動かして、フラグを回収していかなければいけないのだ。つまり、エンディングの分岐となる“選択肢”そのものを、自らの力で探して行かなければいけないのである。  これがまた非常に難しい。難しいが、やりがいもある。アップデートで、今まで気づかなかったところにフラグが追加されていることもある。そのアップデートも頻繁に(それも無料で)行われていくので、何度周回しても飽きないのだ。 「俺聴いたことある、隠れエンドの話」  スマホをいじりながら言うのは、友人その二である木村だ。 「エンドっていうか、隠れコマンドっていうか?そのフラグ回収すると、特別なモードが解放されるんだって。名付けて、復活モード?」 「何それ?」 「や、俺も噂で訊いただけでまだ詳しくは調べてないんだけど。ほら、カナコってプレイヤーの選択肢次第ですぐ死ぬじゃん?でもその復活モードだと、直前でセーブができる代わりにさらに死亡率が上がってるんだって。だから難易度はナイトメアなんだけど、だからこそ熟練プレイヤー向きだって話。見つけたら面白いんじゃね?フラグは例のマンションにあるらしいけど、俺はまだどこにあるか知らないや」 「ふーん……?」  なんか面白そう、と僕はにやりと笑った。  カナコミステリーは大好きなゲームだが、時々退屈なエンディングもあるのは否めない。自分としては、殺人事件やらホラーやらの展開に入るシナリオが好きなのだが、時々面白みがないほのぼの恋愛話になってしまったり、刺激ゼロの家族愛ルートに入ってしまうこともあるのである。そういう、既に見たけど好きではない、ルートに入ってしまった場合はリセットしてやり直すしかない。しかもこのゲームは直前で手動セーブができないという難点がある。章の頭から再度やり直しになってしまうので、それがちょっと面倒くさかったのだ。  だが、プレイヤーキャラであるカナコが死にまくるというのなら、きっと刺激的なシナリオが多いのだろうし、直前セーブもできるならストレスも少なくて済むだろう。是非ともフラグを見つけて回収したいものである。 ――あのマンションのどっかにフラグがあるのか。探してみっかなー。  帰宅部で、かつ塾にも行っていない高校一年生の身はなんとも自由だ。今日も夜までゲーム三昧と確定した瞬間である。  有りがたいことに、今日は月曜日。親が夜遅くまで帰って来ないのが決まっている日である。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!