ふっかつのじゅもん。

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 ***  帰って早々、手洗いうがいをしてバッグを部屋にぽーんと捨てると、早速僕はゲーム機のスイッチを入れた。もういつでもすぐにプレイできるようにと、テレビに繋ぎっぱなしにしてあるのである(両親にはすぐ片づけろと毎回叱られているが、いちいちしまっていたら面倒で仕方ないのだ)。  前回プレイした第三章の始めからスタートさせ、分かっている通りにマキという女のマンションまで辿りつく。とにかく今日は、隠しモードがあるというこのマンションを徹底的に調べるつもりマンマンだった。四階のマキの部屋まで行くとシナリオが進行し、もう二度とマンションに戻って来られなくなってしまうので、調べられるタイミングは今しかないのである。マンションの前の道路や植え込み、電柱などはクリックしても何も変化はない。次は一階へ、と玄関をクリックして中に入る。 ――そういえば。  ふと思い出したのは、教室での田口との会話だ。 『や、それは前々から結構怪しいって言われてたんだって、ネットでは。だって、マキの部屋は四階じゃん?なのに、何で三階でキャラがエレベーター降りられるんだろうって。三階の部屋、どこ調べても“不在のようだ”としか表示出なくて、何も起きないってのにさ』  マップの数が増えれば増えるほど、制作側の手間も増えるし容量も重くなるのは道理だ。なるほど、彼の言う通り本当になんの意味もないなら、三階の廊下のマップなんて作る必要はなかったことだろう。  ということはつまり、何のフラグも見つかっていない、会話イベントもないフロアマップがあれば、何かが隠れている可能性が濃厚ということになるのではないか。 ――とすると、実は一階のエレベーターホールって結構怪しかったりする、のか?  三階の件を除けば、主人公にとって用があるのは四階のマキの部屋のみ。というか、マキの部屋番号を入手してここまで来ているから、まっすぐ四階に向かう以外にこのマンションでの用事はないということになる。が。  それにしては、何もないマップがもう一か所あるな、ということには気づいていた。一階のエレベーターホールが、妙に丁寧に作られているのである。エレベーターで四階まで行く以上、ホールの存在そのものは必要だ。しかしそれなら、2マップも使って休憩スペースや、人がいない管理室のカウンター、掲示板まで作り込む必要があるだろうか。  やっぱりこの中に、何かが隠れているような気がしてならない。僕は一階のホールを、端から順々に、慎重に調べていくことにする。露骨に怪しい掲示板は、何度調べても“最近のイベントについての告知がある”としか表示されない。新しい台詞も出ないし、多分関係ないのだろう。他に何か、調べられそうな場所はあっただろうか――。 「ん?」  管理室のカウンター脇を調べたところで、僕は気づいた。いつもカウンターを調べて“管理人は留守のようだ”という表示が出たところで諦めてしまっていたのだが。どうやらそこから少し右にズレたところにも、調査ポイントはあったということらしい。落とし物ボックス、の前に立って決定ボタンを押すと、こんなセリフが表示された。
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