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ふっかつのじゅもん。
カナコミステリー、というテレビゲームがある。
名前の通り、謎解き系のゲームだと言っていい。簡単に趣旨を説明するのであれば、大学生のカナコという女性キャラクターを操作して、失踪した兄の行方を探すというゲームである。ノベル方式ではなく、カナコを動かして学校や町、公園などを探索し、証拠集めをしたり聞き込みをしながら兄の行方に繋がるヒントを探していくというものだ。
プレイヤーの選択次第で、彼女の結末も兄が巻き込まれた事件の内容も変わるという、いわゆるマルチエンド方式になっている。地味なゲームに見えるが、グラフィックが最新機種に相応しく非常に美しい上、音楽も壮大で非常に華やかな作りになっている。しかもシナリオひとつひとつが作りこまれている上、一度トゥルーエンドを見ないと見られないエンディングがあったり、新しいシナリオがアップデートでどんどん増えていったりするのだ。
プレイヤー同士で推理や考察を話すのも面白い。男性でも女性でも楽しめるゲームな上、殺人事件が起こることもあれどグロテスク度は控えめであるため、若者の間で現在大流行しているゲームなのだった。高校生の僕のクラスでもそれは同じである。同じゲームを持っている者同士、今日も教室ではカナコミステリーのプレイ談義で持ちきりなのだった。
「兄貴の元恋人のマキっていう女のマンションをさ、突きとめるところあるじゃん?」
僕はため息をつきながら友達に語る。
「あそこでさ、さらに殺人エンド、自殺エンド、妄想エンドとかに分岐するから大事なとこなんだけど……なんかそれ以外にも分岐隠れてるらしいんだよな、どこか知ってる?」
「あー」
友人その一である田口は、斜め上の方を見て告げた。
「そういやそんな話を聴いたことがあるような、ないような。アプデでいろいろ変わったりするから、ネットの攻略情報が追い付いてないんだよな。ていうか、あんまり攻略情報見すぎるのも面白くないし。ああいうの、自分で見つけたからこそ面白いってのもあるもんな」
「そうなんだよ。妄想エンドに入るフラグが、まさかマンションの消火器を調べたら立つとか思わねーじゃん?しかも三階の消火器をピンポイントで調べなきゃいけないって、なかなか気づかないって」
「や、それは前々から結構怪しいって言われてたんだって、ネットでは。だって、マキの部屋は四階じゃん?なのに、何で三階でキャラがエレベーター降りられるんだろうって。三階の部屋、どこ調べても“不在のようだ”としか表示出なくて、何も起きないってのにさ」
「あー、言われてみればそうか。何か理由が無きゃ、三階のマップ作らないもんなあ……」
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