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吐く息は白く、夜空を見上げても月はない。
肌を刺す寒さに手袋を外し、頬を直に両手で覆う。
じんわりと温まる頬の真ん中にある冷たい鼻だけ浮いている感覚が新しい。
町外れの霊園で私は一人、墓の前で佇む。
草木も眠る丑三つ時。
女が一人でこんなところにいたら誰もが二度見することだろう。
逆に私だってこんなところに誰かが来たら二度見する自信がある。
さて、やるか。
手袋をコートのポケットにしまい、私は懐中電灯を首と肩に挟めながら作業に取り掛かった。
香炉をずらし、拝石を上げる。
するとそこには私が手に入れたかった人の真新しい白い骨壺があった。
こんなに小さくなっちゃって。
手にした骨壺は両手で温めても冷え切っていて熱は持たない。
「また会えるから。そうしたら一緒に温まろう?」
骨壺に唇を寄せて、私はうっとりと陶器を舐めた。
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