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ただ家出するだけじゃダメだ。このトアル王国からできるだけ離れた外国に逃げねばならない。
そのために必要なことは……。
新しいノートを用意し、海外逃亡に必要な条件を書き出してゆく。
──その1、捜索、報復されないための手段を用意する。
わたしが逃げたと知れば、ヴィクトリアが、あのおそろしい姫が、家族たちに報復するかもしれない。
アスターは死んだと見なされるのが望ましい。
その方法を考えるんだ。
──その2、移住先を見つける。
移住先を選定する。遠くにあるほうが望ましい。
でも、あまりに遠かったり国交がなかったりすると厳しいよね。
あと、人のいない荒野や森の中で暮らすのも無理。わたしにはそんな生活耐えられない。
地方の、小さな街がいいだろう。
──その3、移住先の家と暮らしを用意する。
住む場所はもちろん、生活資金と収入が必要だ。
残された時間は四年。この短い間では、家を買うだけのお金を用意することも難しい。
貯金だけで生活は無理だろう。逃亡先での収入が必要だ。
──その4、移住先へ行くルートの選定。
信用できる、安全な交通手段と業者を見つけないといけない。
山賊が出る陸路より、船を使ったほうがいいかな?
ちゃんと調べよう。
──その5、移住先での身分、名前を用意する。
何かの拍子に、わたしが生きていることが知れたら、ヴィクトリアのことだ、殺し屋を差し向けるだろう。
アスターであることを隠して生きないといけない。別人の名義で土地を買い、別人として暮らさなくてはならない。
別人になるというのは、不安も感じるけど、ちょっとワクワクする自分がいる。
そうだ、役所なんかへのワイロも必要だろう。またお金がかかるなぁ。
──その6、計画に必要となるものを選定する。
1~5を精査して、計画に必要なものを吟味する。
──その7、必要な資金を計算する。
とにかくお金。
ファンタジーな異世界でもお金がすべてだ。
どれだけ必要か、計算しないとね。
──その8、資金を調達する。
まだ十一歳のわたしが、あと四年でどこまで資金を調達できるか……。
絶望しかないけど、生き延びるためだ。がんばろう。
──その9、必要なものを準備する。
土地、家、その他の生活用具。交通手段。旅行用品。
そのリストを作り、準備するのだ。
──その10、最終計画の立案と準備。
失踪する時期を決め、そのための準備、根回しなど、最終計画を作る。
そして、強い意志で決行するのだ!
「ふぅ……」
ここまで書いたら、ちょっと落ち着いた。
不安に思っているだけじゃ、その重さにつぶされてしまう。問題を具体化し、対策を考えることで、気持ちを前向きに切り換えるのだ。
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