幕間 嵐の前 その2 クソザコたちの叛乱(ジャクリーン視点)

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「ジャクリーン!」 「あなたなんてことを!」  思わずついて出た言葉に、呪法隊のメンバーたちが声を上げました。  ヴィクトリアさまは王室御三家の令嬢にして、王位継承権をお持ちになるお方。ワタクシたち貴族からみても天上におわす存在。それに加えて結社ネフィルサークルの長でもあられる。  そのヴィクトリアさまを疑い、批判めいたことを口にするのはあってはならないことです。  普段のワタクシでしたら、このようなことは言わなかったでしょう。ワタクシは聡明で礼儀正しく、つつましい淑女なのですから。ですが── 「いいえ、あえて口にします!」  ワタクシは更に大きな声で言い返しました。ええ、そうですとも。もう黙ってられません。 「王といえど、間違いがあらばそれをただすのが臣下の勤め。同じように、ヴィクトリアさまに問題があれば、それをご指摘して差し上げるのはワタクシたちの義務というもの。そうではありませんこと?」  ワタクシの正論に、皆黙り込んでしまいました。そうです。ワタクシはいつも正しいのです。 「皆さんも気づいているはずです。ネフィルサークルは──いえ、この学園が危機的状況にあることを。  危機の名はアスター・リーヴ!  あの女は、ヴィクトリアさまに取り入り、あらゆるものを破壊しようとしています。良識、秩序、貴族の誇り、そのすべてを破壊しようとしています。  このままではあの女に──あんな底辺貴族の娘に、このネフィルサークルは乗っ取られてしまいます。それでもいいのですか?」 「冗談じゃありませんわ!」 「そんなこと、とうてい許しておけませんわ!」  口々に賛同の声が上がります。そこに── 「いっそ私たちで組織を手に入れませんか?」  エリスがとんでもないことを言い出した! 「え、えええエリスさん! あなたなんてことを!」  思わず声がひっくり返る──いえ裏返る。そのワタクシに、エリスは令嬢らしからぬ下品な笑顔を浮かべた。 「今日、皆さんに提案したかったのはこのことです。私、知ってしまったのです。ヴィクトリアさまの秘密を」 「ヴィクトリアさまの秘密ですって?」 「ええ、学園内にあるヴィクトリアさまの館。そこの侍女が、うっかり漏らしたのです。  ──ヴィクトリアさまには魔力がない、と」  な、なんですって!?
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