171人が本棚に入れています
本棚に追加
「ジャクリーン!」
「あなたなんてことを!」
思わずついて出た言葉に、呪法隊のメンバーたちが声を上げました。
ヴィクトリアさまは王室御三家の令嬢にして、王位継承権をお持ちになるお方。ワタクシたち貴族からみても天上におわす存在。それに加えて結社ネフィルサークルの長でもあられる。
そのヴィクトリアさまを疑い、批判めいたことを口にするのはあってはならないことです。
普段のワタクシでしたら、このようなことは言わなかったでしょう。ワタクシは聡明で礼儀正しく、つつましい淑女なのですから。ですが──
「いいえ、あえて口にします!」
ワタクシは更に大きな声で言い返しました。ええ、そうですとも。もう黙ってられません。
「王といえど、間違いがあらばそれをただすのが臣下の勤め。同じように、ヴィクトリアさまに問題があれば、それをご指摘して差し上げるのはワタクシたちの義務というもの。そうではありませんこと?」
ワタクシの正論に、皆黙り込んでしまいました。そうです。ワタクシはいつも正しいのです。
「皆さんも気づいているはずです。ネフィルサークルは──いえ、この学園が危機的状況にあることを。
危機の名はアスター・リーヴ!
あの女は、ヴィクトリアさまに取り入り、あらゆるものを破壊しようとしています。良識、秩序、貴族の誇り、そのすべてを破壊しようとしています。
このままではあの女に──あんな底辺貴族の娘に、このネフィルサークルは乗っ取られてしまいます。それでもいいのですか?」
「冗談じゃありませんわ!」
「そんなこと、とうてい許しておけませんわ!」
口々に賛同の声が上がります。そこに──
「いっそ私たちで組織を手に入れませんか?」
エリスがとんでもないことを言い出した!
「え、えええエリスさん! あなたなんてことを!」
思わず声がひっくり返る──いえ裏返る。そのワタクシに、エリスは令嬢らしからぬ下品な笑顔を浮かべた。
「今日、皆さんに提案したかったのはこのことです。私、知ってしまったのです。ヴィクトリアさまの秘密を」
「ヴィクトリアさまの秘密ですって?」
「ええ、学園内にあるヴィクトリアさまの館。そこの侍女が、うっかり漏らしたのです。
──ヴィクトリアさまには魔力がない、と」
な、なんですって!?
最初のコメントを投稿しよう!